プロ分析官が見たオマーン戦。劇的に流れを変えた三笘と古橋だが、スタメンではない理由も垣間見えた

2021年11月19日 サッカーダイジェストWeb編集部

決定機を作らせず、CKすら一本も与えなかった

三笘(左)の投入で先手を打つと、オマーンの出方を窺いながら古橋(右)を送り出した。写真:JFA提供

 勝点3が必要な一戦を敵地で戦った日本代表は、オマーンを1-0で下しました。結果としてオーストラリアが中国と引き分けたことで順位も入れ替わり2位に浮上。前節のベトナム戦も含めて、アウェー2連戦で失点しなかったことは間違いなく評価して良いところです。

 また、オマーン戦ではポゼッション率70パーセント、相手に決定機を作らせず、CKすら一本も与えなかった。内容面では「退屈だ」などの批判が出ることも分からないわけではないですが、90分トータルのマネジメント、交代やシステムの変更、采配面など、非常によくできた試合だったと評価できます。

 高いポゼッション率の影響も大きいですが、相手にボールを握らせず、自分たちがボールを奪った時のファーストパス、セカンドパスを簡単に失わず、押し込んだ状態で戦えました。

 前半に長友佑都選手がボールを奪い切れずミドルシュートを許したり、後半も南野拓実選手の落としがズレてしまい、相手の4番の選手にシュートを許すことはありましたが、相手のチャンスも自分たちのミスから。組織として危ない場面を作らせなかったと言えます。

 アウェーで相手のCKゼロを完遂するのはどれだけ大変なことか。もちろん相手とのレベル差はありますが、どんな相手でも、CKを0本、ボックス内のシュートも0というのは、世界を見てもかなり難しいこと。GKの権田修一選手プラス、4バックを中心として裏を取らせない守備ができた証左だと思います。もちろん守備の良さは前線からの追い込み、プレスがあってのことですが、チーム全体としてもアウェーということを考えれば、良い出来だったと思います。

 守備面で前半唯一気になったのは、キレイにボールを通される場面はなかったものの、20分に長友選手が相手に入れ替わられて、真ん中に遠藤航選手しかいなかったという場面です。日本の4-3-3の守備では、アンカーの遠藤選手がどうしてもひとりでカバーしなければならない場面が出てきます。ここのリスクをどう捉えるのかは、今後の課題になるでしょう。
 
 一方で攻撃面の課題は、まず、守田英正選手が累積警告のため不在で、インサイドハーフをどうするか、が一つのポイントでした。オマーン戦では柴崎岳選手を起用し、ベトナム戦では右のインサイドハーフで使っていた田中碧選手を左に変更しました。

 15分のシーンでは、右サイドの選手たちでどう崩すかという好例がありました。南野選手から田中選手へボールが渡って、そこから右に展開します。その際に山根視来選手がタイミングよくオーバーラップしていたのですが、受けた伊東選手は使う直前でアーリークロスを選択しました。

 あるいは38分、遠藤航選手からひとつ飛ばしたパスが伊東選手に入りました。今度は開いた形で受けたので、ひとつ内側のレーンにスルーパスを出します。しかし、インナーラップで中に入っていくような、裏を狙う動きを柴崎選手がしていなかったため、チャンスにはなりませんでした。

 この右サイド3人の関係が、即席で組んでいたということはありますが、上手くいかなかった。森保一監督の誤算もあったのではないかと思います。

 しかし、柴崎選手を右に置くことで当然予測できていたこと。上手くいかなかったときの二の矢、三の矢も用意していたはずです。また、南野選手が違いを生み出すまでには至っていなかったため、得意な中央のゾーンで活かしたい。そんな思惑もあって、三笘薫選手に白羽の矢が立ったのでしょう。

 アンカー脇をプロテクトし守備を盤石にする。攻撃面を活性化させる。そんな攻守両方の思惑から、後半4-2-3-1に変更したのだと思います。
 

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