なぜバルサは一度見送ったD・アウベスの再獲得に動いたのか。番記者が明かす舞台裏【現地発】

2021年11月19日 エル・パイス紙

たとえ試合に出られなくても、ムードメーカーとしての働きに期待

復帰セレモニーで笑顔を見せるD・アウベス。背番号はイニエスタが背負っていた8に決定した。(C)Getty Images

 ダニエウ・アウベスがバルセロナへの復帰が決まった。シャビ体制の補強第1弾である。ジョゼップ・グアルディオラが監督に就任した2008年夏にも新体制補強第1弾として加入しており、歴史が繰り返される格好となっている。

 D・アウベスの頭の中にあるのは、来年のワールドカップだ。カタールの地で有終の美を飾ったうえでバルセロナのようなビッグクラブで現役生活に別れを告げたい希望を持っている彼は、少なくとも1年間の契約を希望していた。しかし最終的に半年間というバルサ側の条件を承諾し、さらにクラブの経営状況を踏まえ、格安年俸を受け入れた。裏を返せば、何にも増してバルサの再びユニホームを着たいという意欲が勝っていた証左である。

 一方、バルサは9月にD・アウベスがサンパウロを退団した後、一度フットボールディレクターのマテウ・アレマニ―とスポーツディレクターのラモン・プラネスを中心に再獲得を検討している。しかし、世代交代へと舵を切った新生バルサにおいて38歳という年齢が問題視され、見送られていた。そんな中、なぜここにきて再獲得に至ったのか。

 背景にあるのがシャビの監督就任だ。シャビは入団交渉においてプレミアリーグの全権型のマネージャーのような編成面でも発言権が付与される待遇を要求しており、今回のオペレーションでも影響力を発揮した形だ。

 さらにその煽りを受けてラモン・プラネスが退団するなど、新監督の就任を境に、スポーツ部門で刷新の動きが起きている。

【動画】復帰セレモニーでバルサのサポーターに大歓声で迎えらるD・アウベス
 バルサの右サイドバックはセルジーニョ・デストがレギュラー格だ。セルジ・ロベルトも器用さを買われ長年プレーしてきた。しかしシャビはセルジ・ロベルトの右サイドバックへの適性は低いと踏んでおり、デストについても前監督のロナルド・クーマン同様に右ウイングでの起用も想定される。

 そこで浮上したのが、つい1か月前に「バルサが俺を必要としているのなら、電話してくれるだけでいい」とラブコールを送っていたD・アウベスだった。

 もっとも加入したとはいえ、再デビューは契約の問題により冬の移籍市場がオープンする来年1月まで待たなければならない。しかしシャビは、たとえ試合に出られなくても、ムードメーカーとしての働きに期待を寄せている。言うまでもなく競争心の高さは折り紙付きだ。

 かくして「アウベス劇場」の第2章が幕を開けた。

文●ファン・I・イリゴジェン、ジョルディ・キシャーノ(エル・パイス紙バルサ番記者)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。

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