「彼は最高であり最低だ」トッテナムの新指揮官コンテが“劇薬”と呼ばれるワケ【英国人記者の目】

2021年11月19日 スティーブ・マッケンジー

「最高の監督」であることは確かだが…

トッテナムのコンテ監督。就任後2試合は1勝1分となっている。(C)Getty Images

 アントニオ・コンテが、大々的にトッテナムに着任した。彼はヨーロッパの複数の国で偉大な実績を持ち、どのクラブにおいても、最高のヘッドコーチだと皆が口をそろえて言うはずだ。

 今回のトッテナム就任時は、ダニエル・レビー会長とクラブに対し、サポーターの不満は頂点に達しつつあった。マンチェスター・ユナイテッドに敗れ、ヌーノ・エスペリト・サントを解任し、ファンの怒りを収めるためには思い切った行動に出なければならなかった。コンテは、唯一無二の選択肢であったと言えるだろう。

 52歳の指揮官はこれまでイタリア代表のほか、ユベントス、チェルシー、インテルといった名門を渡り歩いた。16-17シーズンにはプレミア、昨シーズンはセリエAの覇者となった。こうしたカリスマがベンチにいることは、ヨーロッパのトッププレーヤーをクラブに引き寄せる要素となる。指揮官のフットボール界での非凡な成功は、選手が明るい、前向きな未来を抱くために必要なものだ。
 
 だが、彼の招聘にはマイナスな面もあると思っている。

 コンテはひとつのクラブに長くとどまることがない。トッテナムとの契約も1年半と短い。彼を招き入れるためには多額の契約金が必要になるし、コーチングスタッフへの給与もバカにならない。チェルシー時代はクラブユースにほとんど関心を寄せず、クラブを底上げするための継続した育成面における手腕は疑問だ。

 これこそ、彼が"劇薬"と呼ばれ、最高であり最低であると言われる理由だろう。もしスパーズのファンでなければ、こうしたネガティブな面を気にする必要はないかもしれない。フィールド上での成功だけに焦点を絞れば、おそらく彼は成功する。少なくとも、昨シーズンの7位という順位を下回ることはないと思われる(現在は9位)。

 ただ、一部のスパーズファンが懸念の声を上げているのも、私は理解できる。その懸念が少しでも払拭されるように期待はしているが……。

取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

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