【女子W杯総括】4年間のさらなる成熟を強みにした「なでしこ」。今後はよりタクティカルな戦いに突入する予感も

2015年07月07日 西森彰

確かに、組み合わせには恵まれていた。

確かに組み合わせに恵まれた部分もあった今大会の日本だが、様々な要素が絡んだ結果の準優勝と言えるだろう。(C) Getty Images

「グループリーグ、決勝トーナメントとも日本は組み合わせに恵まれていた」という声は多い。ドイツ、アメリカ、フランスなどFIFAランキング上位3か国が、逆の山に入ったからだ。
 
 日本はグループCで、フル代表の世界大会で勝点を挙げたことのないスイス、カメルーン、エクアドルと同居した。確かに一見すると、楽な組み合わせだ。スウェーデン(GLでナイジェリア、アメリカ、オーストラリア→決勝Tでドイツ)やドイツ(決勝Tでスウェーデン、フランス、アメリカ)のように組み分けられたら、どんな国でも優勝は困難なものになる。
 
 しかし、実はひとつだけ大きな落とし穴が用意されていた。準々決勝だ。中6日でラウンド16の戦いを他グループの3位国と対戦した日本は、準々決勝でブラジルの入ったグループEの1位国か、アメリカの入った激戦区・グループDの2位国と当たる。
 
 中3日の日本に対し、対戦相手は日本よりも2日休養日が多い中5日。日本が研究される時間はたっぷりあるが、日本には乏しい。開幕前の予想では、初戦のスイス戦以外は問題のない組み合わせと考えられていたから、楽なゲームを続けて感覚が鈍った後で、十分な休養&研究時間をとったブラジルに屈する……。それが想定される最悪のシナリオだった。
 
 ところが、ふたを開ければ、先を見据えて猛練習を行なった反動が出て、スイス戦以降も薄氷を踏む1点差勝ちの連続。どの相手にも気を許すことなく戦う習慣がついたところに、予想されたブラジルではなくオーストラリアが勝ち上がってきた。力関係もさることながら、アジアのライバルとは、何度も対戦し、特徴も知り尽くしている。
 
 さらに日本より2日余裕のあるオーストラリアにも、アメリカ、ナイジェリア、スウェーデン、ブラジルと、強豪と激突してきた蓄積疲労が残っていた。その結果、今大会のなでしこジャパン最高のゲームとなり、スケジュール上の罠をあっけなくすり抜けた。
 
 さらにここでオーストラリアと対戦したことで、1回戦のオランダから準決勝のイングランドまで、欧米スタイルで1トップ(3トップ)のチームと3連続での対戦。準備期間が少ない中3日続きの日程では、大きな助けとなった。また、イングランドがカナダを破ったため、7月1日のカナダ建国記念日に予定されていたホストカントリーとの対戦もなくなった。

次ページワンツー・フィニッシュを決めたのは平均年齢でも1、2位の成熟したチーム。

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