果たして、実りある改革案なのか。原副理事長に問う“ワールドカップ隔年開催の是非”

2021年11月15日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

サッカーの日常はクラブチームにある

ワールドカップの隔年開催を推進しているFIFA。解決すべき問題が山積みのようにも映るが、果たして……。写真:Getty Images

 「4年に一度の──」が通例だったワールドカップが近い将来、もしかすると隔年開催(2年に1回)になるかもしれない。ひと言で"センセーショナル"な改革案は、果たして実現可能なアイデアなのか。近年の代表活動、さらにクラブシーンの事情も踏まえ、原副理事長が独自の見解からひとつの回答を示してくれた。

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 結論から述べれば、ワールドカップの隔年開催には賛同できません。世界各国のリーグやクラブとの話し合いもなく、しかも財務的な面などが不透明なまま「2年に1回やれば盛り上がる」と推し進めるFIFAのやり方はナンセンスです。

 実際、Jリーグも所属するワールドリーグフォーラム(42か国のリーグで形成された組織)では「話にならない」との見解で一致していると聞いています。隔年開催の場合はインターナショナルブレイクを現行の5回から1回にして、10月の1か月で短期集中的にワールドカップ予選をまとめて行なう案も出ているようですが、そう簡単にはできません。1か月の間、選手を拘束して代表活動に専念させることがどれほど大へんか。(日本サッカー協会の技術委員長として)アジアカップやワールドカップに帯同した私の経験も踏まえて言えば、相当な準備が必要ですよ。

 ギリギリのところで均衡が保たれている現状のサッカーカレンダーを精査せず、なぜこんなアイデアが突飛に出てきたのか。不思議でなりません。議論をすることはもちろんいいと思います。話し合いを何度も重ねて導き出された結論が「ワールドカップの隔年開催」なら理解できますが、今回は少し乱暴な言い方をすればFIFAの一方通行。リーグやクラブへの根回しなしに進めては大混乱に陥る恐れもあります。
 

 実際、今年12月の投票(FIFA加盟の211協会による)で隔年開催を決める予定ですが、すでにUEFA(欧州サッカー連盟)やCONMEBOL(南米サッカー連盟)は強く反対しています。たとえ過半数で可決されたとしても、UEFAはワールドカップをボイコットする可能性を示していて、そこからもまとまりのなさは窺えますよね。

 FIFAには、クラブの試合を減らしたうえで国際大会を増やしたい意向があると考えています。しかし、選手の雇い主は各クラブ。試合減によってクラブの収入が減り、同時に選手の年俸まで下がったらFIFAはどうするのか。その解決策を提示せず、「12月に採決を」というのは、正直、現実的ではありません。

 サッカーの日常はクラブチームにあります。選手たちはクラブで試合に出て、収入を得る。ワールドカップが隔年開催になれば、これまでの日常がなくなるわけですから、クラブや選手への補填をどうするか、そのあたりも考えないといけません。4年に一度のワールドカップを2年に一度にしたからといって、FIFAの収益は倍増しないと思います。むしろワールドカップの価値が下がってしまうことを懸念しています。
 

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