「ぜひ、やろう。即決しました」ベルギーSTVVの立石敬之CEOが明かす震災復興とJヴィレッジ復活への思い

2021年11月03日 中田徹

福島で大掛かりな“トライアウト”を実施

現役時代は東京ガスでもプレーした立石CEO。Jヴィレッジはやはり特別な存在だ。(C)STVV

「ここから、世界へ」を合言葉に、合同DMM.comがベルギー1部リーグに所属するシント=トロイデンVV(以下STVV)を運営し始めたのは、4年前のことだった。地方都市のシント=トロイデンとの絆を大事にしながら、日本サッカーのレベルアップに貢献することが、彼らのミッションだ。

 これまで14人もの日本人選手がSTVVのユニホームに身をまとい、本場の舞台で技を磨いて力をつけた。日本代表にGKシュミット・ダニエル、DF橋岡大樹、冨安健洋(現アーセナル)、MF遠藤航(現シュツットガルト)、鎌田大地(現フランクフルト)といった面々を送り出し、今季は7人もの日本人選手が所属している。

 STVVは14歳以下の選手、およそ150名を対象に「J-VILLAGEから世界へ―Jヴィレッジチャレンジpowered by シント=トロイデンVV」と銘打った"トライアウト"を実施することになった。これは2011年3月に起こった東日本大震災の復興支援の一環として福島県、Jヴィレッジと共に開催するもの。優秀な選手には、STVV所属選手とのオンライン交流イベント参加権の特典が与えられる(新型コロナウイルスの感染状況の好転・渡航規制の緩和時には変更される可能性があります)。

 この企画の話がSTVVの東京支店に来たとき、ベルギーで経営・強化の陣頭指揮を振るう立石敬之CEO は「ぜひ、やろう」と即答したという。

「私たちは日本人なので、Jヴィレッジに子どもたちがたくさん戻ってきて、宿泊しながらサッカーをすることで、少しでも役に立ちたいという思いがありました。実は、私がFC東京のGMを務めていた頃も、ずっとJヴィレッジの方たちと復興の話をしてたんです。『FC東京のキャンプでもやろうか』ということも話していたのですが、私が2018年にSTVVに来たことから実現しませんでした」

 日本代表や各クラブの合宿、全日本少年サッカーなどアンダーカテゴリーの全国大会、指導者や審判員の養成など、1996年開場のJヴィレッジは久しく日本サッカーの聖地だった。2002年のワールドカップに参加したアルゼンチン代表の合宿をずっと視察したり、S級ライセンスの取得に訪れたり、立石にとってもJヴィレッジは思い出深い場所である。
 
 また、現役時代は東京ガス、引退後はFC東京の強化部長、GMを務めた身としても、Jヴィレッジは関わりの深い施設だった。

「FC東京の成り立ちは、鳥原光憲さん(当時、東京ガスサッカー部長。後に東京ガス社長、会長)が東京電力に『一緒にサッカークラブを作りましょう』とお伺いを立てて、商社などのビジネスパートナーたちと共に作ったんです。つまり、仲間で作ったクラブだったんです」

 一方、Jヴィレッジは東京電力によって建設された施設だった。このような関係から、FC東京は事あるごとにJヴィレッジでキャンプを開いていた。しかし、東日本大震災によってJヴィレッジは閉鎖を余儀なくされ、原発事故の対応拠点に変わった。

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