「危険分子」でも平等に起用。“辛抱強い”人材活用術で栄冠を勝ち取った、度量の大きな名将たち【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2021年11月02日 小宮良之

ハメスやベイルも使い切った

ともに忍耐強く欧州制覇を成し遂げたF・サントス(左)とジダン。(C)Getty Images

 戦国時代を平定した天下人、徳川家康は一筋縄ではいかない人生を過ごしている。母とは引き離され、父は暗殺され、幼少時代は人質として過ごし、生き残るために、妻も、長男も、その手で葬らざるを得なかった。激烈な生涯だ。

 家康は、狂わなかった。辛抱強く家をまとめ、一枚岩の武士団を最大の武器とした。そして最後は天下を取ったのだ。

 サッカー監督も、重き荷を背負って行くがごとし、だろう。

 組織を大きな風呂敷で包めるような寛容さが求められる。それは、器と言い換えてもいいか。あるいは度量だ。時に憎しみすらも押し隠し、マネジメントできなければならない。
 
 チャンピオンズ・リーグ3連覇を成し遂げたジネディーヌ・ジダン監督は、その激情を極力表に出さない。どんな選手にもチャンスを与える。平等な競争を与えることで、強い組織を作ることができる。
 
 当然、あぶれる者たちは出てくる。プロという競争原理においては仕方がない。彼らは反逆的な行動をしばしばする。
 
 しかし、ジダンは憎しみや嫌悪で行動しない。麾下選手である限り、その力をチームのために使う。マスコミが批判を展開しても、彼はリーダーとして超然とし、「チームに必要なら使う」と繰り返し、実際にそうしてきた。ハメス・ロドリゲス、ガレス・ベイルはマドリーでは気持ちが切れていたが、それでも高い能力を使い切った。
 
 辛抱強い人材起用が、大きな栄光をもたらしたのだ。
 
 ポルトガル代表監督を率いて、EURO2016で優勝したフェルナンド・サントスも、度量の大きさで有名である。選手を適材適所で使う。キャラクターへの好き嫌いではなく、人を用いることに全精力を傾ける。

 例えば、欧州制覇の切り札となったリカルド・カレスマは行儀のいい選手とは言えなかった。ポルト時代には、ジュレン・ロペテギ監督から毛嫌いされている。気分屋で、チームの輪を乱すこともしばしばだったからだ。

 しかしF・サントス監督は、交代の切り札としての役目を与えることで、クリスチアーノ・ロナウドも一目置く才能を引き出した。

 たとえ悪党であろうと、代表に呼び寄せる。危険分子になり得るような選手こそ、発奮させられたら、敵に対して闘気をぶつけ、勝利をもたらすと承知しているからだ。事実、カレスマは決勝トーナメント、クロアチアとの延長戦で貴重な決勝点を記録。故障を抱えていたにもかかわらず、大会を通していざピッチに出て、心萎えずに戦い続けたのだ。

「素直でいい子だけの集団は頂点を狙えない」

 フェルナンド・サントス監督は、勝負の真理を誰よりも心得ているのだろう。欧州制覇したポルトガル代表には18歳のルーキーも、38歳の大ベテランもいた。ましてや、年齢になど意味はないのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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