【福島発コラム】世代別代表に生まれた国際舞台での空白の2年…パリ五輪世代が体感した日の丸を背負う責任

2021年10月29日 松尾祐希

2年弱もの間、海外勢に胸を借りる機会は皆無。国内でしか活動ができなかった

国際舞台での初めての公式戦となったFW細谷。今予選では2試合連続ゴールを放った。写真:浦 正弘

 論より証拠である。スタジアムに掲げられる日の丸、試合前に流れる互いの国歌。試合が始まれば、ピッチ上では国の誇りを懸けた激しい戦いが繰り広げられる。球際の攻防は熾烈さを増し、いつも以上の熱量でボールに向かっていく。絶対に負けられないという重圧が選手たちを襲うが、そのプレッシャーがいつも以上の力を引き出す源泉でもある。
 
 そうした体験は、実際に真剣勝負の場に臨んでみなければ分からない。福島・Jヴィレッジで開催された今回のU-23アジアカップ予選は日本サッカー界にとって再出発だった。

 コロナ禍において、A代表と東京五輪世代以外の日本代表が、国際試合を行なうのは今回が初めてとなる。最後に公式戦を戦ったのは2年前の秋に行なわれたU-17ワールドカップとU-19アジア選手権(現・アジアカップ)予選。親善試合を含めても昨年2月下旬のENESYS2019 青少年サッカー交流大会以来となる海外勢との対戦だ。2年弱もの間、海外勢に胸を借りる機会は皆無。国内でしか活動ができず、各年代の代表チームは定期的に4日前後のショートキャンプを実施し、Jクラブや大学生、高校生との練習試合で強化を図るほかなかった。

今までの五輪代表は少なからず海外勢と公式戦で対戦した経験を持っており。東京五輪世代も世代別のワールドカップで真剣勝負を繰り広げている。しかし、パリ五輪世代は公式戦の中止でほとんど国際舞台を体験していない。

 今予選のメンバーを見ても、U-22日本代表のパリ五輪世代組19名中、過去に公式戦で海外勢と対戦した経験を持つ選手は9人のみ。もちろん親善試合であれば、ほとんどの選手が一度は戦っているが、全く体験していない選手もいる。佐藤恵允(明治大)は小学生以来で、今季J1で25試合に出場している細谷真大(柏)に至っては初めての国際試合だった。同時期に行なわれているJリーグ、ルヴァンカップ、天皇杯などの関係で国際舞台を経験している選手が一部招集外だが、来年6月の本大会でアジアの強国と戦う機会を逃すわけにはいかない。3年後の五輪は自力で出場権を掴まなければならない点を踏まえても、今予選はパリ五輪世代の今後を左右する戦いだとも言えた。

 いずれも4-0で勝利したカンボジアと香港とは、実力差があったかもしれない。しかし、日本の選手たちも場慣れしておらず、2試合とも序盤から簡単にゲームを運べなかった。大学生や高校3年生が多かったカンボジア戦だけではなく、Jクラブで出場機会を掴んでいる選手が多く出場した香港戦も苦戦。5バックで守ってくる相手に手を焼き、攻撃のスイッチを入れる縦パスがなかなか通せずにブロックの外でパスを繋ぐ場面が散見した。

【動画】第1戦は松木玖生が先制弾!カンボジア戦ハイライト

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