【バイタルエリアの仕事人】vol.10 小野伸二|「僕を目指してはだめ」黄金世代の“天才”が子供たちに伝えたい“努力”の重要性

2021年10月29日 手塚集斗(サッカーダイジェストWeb編集部)

小林悠選手のボールを呼び込む感覚は参考になる

今季、約1年半ぶりに札幌へ帰ってきた小野。Jリーグのみならず、欧州や日本代表でも輝かしい実績を残してきた。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 サッカーにおける攻守の重要局面となる「バイタルエリア」。ゴールや失点に直結する"勝負の肝"となるスペースをいかに攻略するか、死守するかは、多くのチームにとって不偏のテーマだろう。そんな「バイタルエリア」で輝きを放つ選手たちのサッカー観に迫る新連載のインタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第10回は、今年、1年半ぶりに古巣の北海道コンサドーレ札幌へ帰還した日本が誇る"天才"小野伸二だ。

 2001年に若くして海外へ渡り、オランダの強豪フェイエノールトでは、UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)制覇に貢献。18歳で日本代表デビューを果たし、3大会連続でワールドカップに出場するなど、輝かしい実績を残してきた黄金世代を象徴するスターが語る「バイタルエリア」とは――。

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 日本の選手はバイタルエリアでボールを持つと、慌ててしまうイメージがありますが、一方で海外の選手は落ち着いている印象があります。そこが外国人選手の長けているところ。とくに日本とヨーロッパでは大きく違う部分だと感じています。

 自分自身が大事にしていることは、このエリアで受ける前に、前もってスペースや敵、FWの位置を確認することです。ボールを受けて前を向けても、それだけで終わってしまっては意味がない。前を向いたあとにどうするか、というところまで考えておかないといけないと思います。

 いまの時代、どんどん守備戦術がコンパクトになってきていて、攻め手からしてもスペースが見つけにくいので、出し手と受け手のタイミングが0コンマ何秒合わないだけで、パスが繋がらないことが多いですからね。

 僕がバイタルエリアでボールを受けた時にまず見るのは、もちろんゴールです。点を取らないといけないわけですから。そのうえで、ゴールを奪うために、相手にとって一番脅威的で、自分たちにとって得点源になりそうな前線の選手の動きを察知、予測しておくことが大切です。

 FWの動きも大切で、裏に走るのか、それとも足もとなのか、意思表示をしてくれると出し手としてはすごく出しやすい。出し手が「行け!」と言ってから、FWが動き出しても遅いんです。

 そういう意味では、川崎フロンターレの小林悠選手は上手い選手だなと感じています。狭いスペースでのトラップの仕方やターンは本当に長けていて、彼のバイタルエリアでのボールを呼び込む感覚は見ていて参考になるんじゃないかなと思います。
 

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