【注目のU-22戦士】攻守両面で違いを見せたCBチェイス・アンリ。課題の判断スピードを改善できれば…

2021年10月26日 松尾祐希

自分の言葉で意思表示できるのが強み

日の丸を背負い、初めて公式戦の舞台に立ったチェイス・アンリ。堂々たるプレーでチームの勝利に貢献した。写真:浦正弘

 試合後に行なわれた会見は、チェイス・アンリ(尚志高)の人柄がよく分かる場だった。

 高校卒業後の欧州挑戦を目指す注目株に対して多くの質問が飛び交うなか、どんな話に対しても笑顔を絶やさずに一つひとつ回答していく。小学校6年生までアメリカに住んでいた影響からか、すんなりと質問が頭に入ってこない場面もあったが、記者陣にその都度、聞き返して答える。自分の言葉で意思表示できるのは彼の強みであり、そうした姿勢はプレー中にも表われていた。

 本格的にサッカーを始めてから、わずか6年。国内外から注目を集めるCBが日の丸を背負い、初めて公式戦の舞台に立った。

 来年開催されるU-23アジアカップの予選を戦っているU-22日本代表が、10月26日に行なわれた初戦でカンボジアと対戦。4−0で勝利し、本大会出場に向けて一歩前進した。

 尚志高と同じ4バックのCBで起用されたチェイス・アンリは、キックオフ直後から堂々たるプレーを見せる。

「ちょっとだけ緊張しました」と苦笑いを浮かべ、「自分も代表での公式戦が初めてだったので、難しかったですね。相手は技術を持っていたし、相手が引いてきて崩せなかったのもあって大変でした」と振り返った通り、序盤は国際試合特有の緊張感や守りを固める相手に苦しんだ。しかし、徐々に肩の力が抜けると、攻守において存在感を示す。

 2004年生まれでチーム最年少の17歳だが、自分の考えを伝えながら先輩たちとプレー。後方から確実にボールを繋ぎ、相方のCB角田涼太朗(横浜)、アンカーの松井蓮之(法政大)、GK佐々木雅士(柏)がボールを持った際もしっかりとパスコースに入った。

 また、無難にパスを出すだけではなく、積極的にボールを前に付けて攻撃の起点となる。パスが強過ぎるが故に味方が受け切れない場面もあったが、積極的に縦パスを狙う姿勢はポジティブに映った。
 
 肝心の守備面でも存在感を発揮。183センチの高さと抜群の跳躍力でカンボジアの選手に競り勝つ。前半の中盤戦以降はカウンターを仕掛けられるシーンが増えたが、冷静に対応していく。本来は潰すプレーを得意とするが、カンボジア戦は相手FWとうまく駆け引きしながら、攻撃を遅らせて味方の戻りを待ってピンチの芽を摘んだ。

 攻撃時のセットプレーでも高打点のヘッドからあわやゴールという場面を作り出すなど、攻守で違いを見せたチェイス・アンリ。試合を通じて上々の"デビュー戦"となったものの、課題もある。序盤は良かったが、試合の途中から縦パスが入らず、判断の遅れから無難なプレーが続いた。

 10月の合宿で「代表レベルでの戦いでは、もっと判断を早くしないといけない」と話していたが、そこはまだ改善されていない。実際に縦パスも「1本、2本はうまくいったけど、3、4本は判断が遅れてしまった」。本人も課題を理解しており、判断スピードに関しては改善の余地を残す。

 カンボジア戦で出た課題とどう向き合っていくのか。浮かび上がった問題をそのままにしない――。良い意味でプライドがなく、素直に他人の意見を飲み込めるチェイス・アンリであれば、この経験を成長の糧にできるに違いない。2日後に行なわれる香港との最終戦も含め、高校ナンバーワンCBが今予選でどのように変わっていくのか注目だ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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