【リーグカップ決勝・名勝負3選】タイトルマッチで壮絶な打ち合いが繰り広げられたのは奇跡的だ

2021年10月27日 浅田真樹

これ以上ないエンタテインメント性に富む試合だった

“王者”と“挑戦者”とにはっきりと色分けされた19年大会のファイナル。札幌が驚異的な粘りを見せ、タイトル奪取まであと一歩に迫った。(C)SOCCER DIGEST

 今年で29回目を数える伝統のリーグカップ(現ルヴァンカップ、旧ナビスコカップ含む)。10月30日に行なわれる決勝戦では、名古屋グランパスとセレッソ大阪が相まみえる。

 タイトルをかけた激闘必至の一戦で、どんなドラマが生まれるか。過去のファイナルでも、忘れがたい名勝負がある。本企画では、スポーツライターの浅田真樹氏に、過去28大会から思い出るに残る決勝戦を3つ選んでもらった。

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 ルヴァンカップ決勝史上最高の名勝負。いくつか候補となる試合はあるのだろうが、最終的には迷うことなく、2019年第27回大会の川崎フロンターレ対コンサドーレ札幌を推す。

 結果を先に言えば、3-3からのPK戦決着で川崎が勝利した。しかし、この試合が名勝負たるゆえんは、単に多くの得点が入った接戦だったから、というだけではない。

 当時の川崎は、17年、18年と2連覇中だったJ1チャンピオン。対する札幌は、これが初の決勝進出。試合を前に、まずは両者の立場が王者と挑戦者とにはっきりと色分けされていたことが試合展開に意外な印象を与え、それを単なる接戦という以上にスリリングなものにした。

 要するに、王者優位の下馬評に反して、挑戦者が驚異的な粘りを見せ、タイトル奪取まであと一歩に迫ったのである。過去のルヴァンカップ決勝で、両チーム合わせて6点以上入った試合は他にもあるが、リードするチームが三度も入れ替わり、さらには、そこから三度ともタイスコアに戻った例は他にない。
 
 得てしてタイトルマッチは手堅く進み、ロースコアゲームになりがちだ。そんな常識に照らしてみれば、これほどの壮絶な打ち合いが決勝戦で繰り広げられたことは、奇跡的と言っても大げさではない。

 最後までどちらが勝つか分からない接戦だったというだけでなく、両チームが多くのゴールを奪い合ったこと。そして、試合途中に退場者が出るというアクシデントも起きたこと。そうした要素すべてを含めて、これ以上ないエンタテインメント性に富む試合だった。

 Jリーグチャンピオンシップや天皇杯など、他のタイトルマッチまで枠を広げても、これを超える名勝負はなかなかお目にかかれないだろう。
 

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