【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「期待、過信、失望、恐怖、安堵……様々な思いが渦巻いたここまでの戦力補強」

2015年07月01日 マルコ・パソット

ミラニスタはキャンプ初日の“顔見せ”へのボイコットを表明。

ミランにとって最も補強が急務なのはCBだろうが、昨シーズンは中盤でも苦しんだのは事実。その点で、ベルトラッチ(写真下)獲得は良きアクションだった。写真は13-14シーズンのジェノア対ミラン。 (C) Getty Images

 どうにか、ギリギリ間に合った――。
 
 今、ミランの幹部たちは、そう胸を撫で下ろしていることだろう。といっても開幕に、という意味ではない。幸運なことに、新シーズンが始まるまでにはまだ1か月半ある。「間に合った」のは、サマーキャンプ初日に対してだ。
 
 イタリアのチームは、新たなシーズンに向けての体制がスタートする初日に選手の顔見世をするのが、ならわしになっている。しかし、ほんの少し前まで、ミランはこの日(7月3日)にひとりも新しい選手を紹介できないという危険に晒されていた。
 
 ミランは"ギリギリセーフ"で、ローマからアンドレア・ベルトラッチ、セビージャからカルロス・バッカを獲得した。
 
 もちろん、だからといってミラニスタが満足するわけではない。バッカとベルトラッチは、「これでミランは安泰」と誰もが思えるほどの選手ではないだろう。事実、クルバスッドの熱いサポーターは、この顔見世への不参加を表明している。
 
 しかし、それ以外のミラニスタはやはり、新入りの選手の顔を"拝みに"行くことだろう。期待していたビッグネームとは言えないが、それでも彼らの獲得は重要な補強ではある。
 
 何より、メルカートでやっと結果が出るようになったのは大事なことだ。なぜなら、それまでの補強では、膠着状態が続いていた。というより、希望していた選手の獲得にことごとく失敗していたのだ。
 
 ミラニスタはこの1か月、様々な噂に翻弄されてきた。新戦力の候補として、ジャクソン・マルティネス、ジョフレー・コンドグビア、果てはズラタン・イブラヒモビッチの名前までが飛び出した。
 
 いや、それだけではない。一時は、次期監督としてカルロ・アンチェロッティをミランベンチに連れ戻すような報道までなされた。言うまでもなく、アンチェロッティはミラニスタが心から愛する監督で、彼らはいやがおうにも盛り上がった。
 
 しかし、これらの噂は全て、泡のように消えてしまった。特に"魔の6月20日"には、たった1日で2人のターゲットを他のチームに奪われている。ほぼ確実と思われていたジャクソン・マルティネスはアトレティコ・マドリーと合意し、コンドグビアに関しては、なんと同じ街のライバルチーム、インテルに奪われてしまったのである。
 
 このダブルパンチを食らった後、ミランの選手獲得の動きはパタリと止まってしまった。まるで、これ以上メルカートに参加するのを怖がっているかのようだった。昔から根回しに長けていたミランらしからぬこの失敗は、彼らにとってかなりショックだったのだろう。

次ページ大型補強とは言い難いが…バッカと本田のプレーは興味深い。

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