川口能活からの金言が急成長の糧に…“俺が主人公”だった大学生GKはいかにしてU-22日本代表合宿へ招集されるまでとなったか

2021年10月05日 安藤隆人

大学に入るまでは「俺が主人公」という考えだった

立正大の2年生守護神、杉本光希。写真:安藤隆人

 関東大学リーグ第18節。流通経済大を相手に完封勝利の立役者となったのが、立正大の2年生守護神・杉本光希だ。

 この試合、杉本は流通経済大から11本のシュートを浴びた。17分、FW熊澤和希とのワンツーで抜け出したサンフレッチェ広島内定のMF仙波大志に強烈なシュートを浴びるが、鮮やかな横っ飛びでポスト右へ弾き出す。23分にもサガン鳥栖内定のMF菊地泰智にペナルティーエリア内から決定的なシュートを放たれるが、コースを見極めて枠外にセービング。チームのピンチを救うと、スコアレスで迎えた49分に立正大の藤枝MYFC内定のMF金浦真樹が先制ヘッドを決めて流れを引き寄せた。

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 これで勢いに乗った立正大は63分と88分に加点。守っては78分に菊池の左CKから中央でMF佐久間駿希が至近距離でダイレクトボレーを放つが、これも杉本が抜群の反射神経で弾き出した。82分にもFW永井颯太の反転シュートを右手一本でビッグセーブ。最後までゴールを割らせることなく、立正大に1部残留に向けて大きな勝点3をもたらした。

「来年もこのチームを1部でプレーできるようにする。その上で全国を狙うことを考えているので、チームとして活動をしていく中で、勝ったチームとしての結果の上に個人の活躍があると思っています。今日はたまたま自分の出番が多かったですが、いつもは自分が調子の悪い時に助けてくれるのがCB3枚だったり、僕らがどれだけ止めても前が決めてくれないと勝てないので、点を取ってくれる攻撃陣がいるからこそ。いつもチームに助けられているからこそ、僕も助けられる時は助けたい。それがチームのためにだと思ってやっています」

 試合後、彼はこう謙虚な言葉を口にした。この言葉を聞いて、筆者には正直驚きがあった。それはジュビロ磐田U-18時代の彼はもっと「自分が」が強い選手だという印象があったからだ。それを素直に彼に伝えると、杉本は笑いながらこう答えた。

「それは変わりましたね(笑)。大学に入るまでは『俺がチームを勝たせる』とか、『俺が守って、俺の力でゼロに抑える』といった、どちらかというと『俺が主人公』という考えでした。でも、立正大に進んで、全国から名の知れた主人公になれる選手が多く入ってきて、須永俊輔コーチからも『チームのために戦う』ということを何度も言い続けられていくうちに、ちょうど1年生の時で試合に全く絡めない時期だったということもあって、『自分の取るべき立場』はどういうものだろうと考えるようになったんです。その時に高校までの僕は『俺が』が強すぎて、自分のプレーが前のめりになった時にやられてしまうことが多かったことに気が付いたんです。昨年の1年間で、『ゴールを1人で守ることはできない』と感じたことで、周りへのコーチングだったり、コミュニケーションだったり、自分なりにチームを支える立場で取り組むようになりました」
 

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