【コパ・アメリカ現地レポート】「南米」が凝縮した好ゲーム|ボリビア 1-3 ペルー

2015年06月26日 熊崎敬

ボリビアが攻め込むたび、ペルーは面白いようにカウンターで切り返す。

今大会初のハットトリックでペルーをベスト4に導いたのが、このゲレーロだ。 (C) Getty Images

【コパ・アメリカ2015】
準々決勝
●ボリビア 1-3 ○ペルー
[得点者]ボ=モレーノ(84分PK) ペ=ゲレーロ(20分・23分・74分)
 
 戦前の予想通りペルーがボリビアを退け、開催国チリとの準決勝に駒を進めた。スコアは3-1。ペルーのゴールは、すべてゲレーロによるものだ。今大会のハットトリック第1号となった。
 
 グループリーグのブラジル戦がそうだったように、ペルーは観衆を飽きさせない面白いゲームをする。この夜もそうだった。厳しいプレッシャーの中でも巧みにボールを操り、ボリビア人たちの背後を取っていく。ボリビアが攻め込めば攻め込むほど、彼らは面白いようにカウンターで切り返すのだ。
 
 ペルーが面白いサッカーをするのは、訳がある。これは南米に精通する知人に教えてもらったことだが、国内リーグは放映権を国外に売れるほどメジャーではないため、スタジアムにひとりでも多くの観衆を呼ぶしかない。そのためにも観衆を狂喜させるテクニックを見せなければならないというのだ。
 
 さて、ゲレーロの3点は次のような形から生まれた。
 
 1点目はバルガスからの精度の高いセンタリングを、豪快なヘッドで叩き込んだ。
 
 2点目はボリビアのFKを見事に切り返したカウンターから。弾んだ球を3人がスピードを落とさず器用に運び、最後にゲレーロがGKとの1対1を落ち着いて決めた。
 
 3点目はボリビアDFのミスパスを奪ったゲレーロが、あっさりと決めた。
 
 3-1というとペルーの圧勝のように思われるかもしれない。だがボリビアも立派な敢闘精神を見せた。2点を奪われた後、左サイドの巨漢モレーノにボールを集め、モレーノと同サイドのテクニシャン、モラレスのコンビネーションで再三、FKを獲得。ここから何度も決定機を迎えた。
 
 3点差がついた終盤もボリビアはひたむきに戦い、84分にモレーノがPKを決め、一矢報いた。終盤、モレーノがひどい肘打ちを敵に見舞ったことで両チームが激しく揉め、ゲームは中断を余儀なくされた。
 
 ブラジル対コロンビア、そして前夜のチリ対ウルグアイがそうだったように、コパ・アメリカは頻繁に膝や肘が出る。そして揉める。よくあることだ。これくらいムキにならなければ、勝負は面白くない。
 
 準々決勝4試合の中で、唯一チケットが売れ残ってしまった一戦。だが、中立のチリ人も叫んでしまうくらい面白く、またレベルの高いゲームだった。
 
 言うまでもなく、ペルーもボリビアも昨年のワールドカップには出ていない。FIFAランクはペルーが54位、ボリビアが89位。だが、この夜の彼らより弱いチームがワールドカップには出ていた。
 
 私は昨年のワールドカップで出会ったコロンビア人から、こんな言葉を何度も聞かされた。
「俺たちはワールドカップを首を長くして待っていた。南米は出場枠が少なすぎるんだ」
 それは3大会、お祭りに出られなかったコロンビア人の心からの声だった。彼らに1-4と完敗した、5大会連続出場の国から来た私には返す言葉がなかった。
 
 ペルーとボリビアの素晴らしい一戦だった。凡戦だったら、コロンビア人の言葉を思い出すこともなかっただろう。
 
現地取材・文:熊崎敬
 
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