エースストライカーの面目躍如! 法政大に5度目の総理大臣杯をもたらした佐藤大樹“自画自賛”FK弾の舞台裏

2021年09月08日 安藤隆人

インフロントにかけて激しく擦り上げたボールは、「イメージ通り」

総理大臣杯決勝の東洋大戦で決勝点を挙げた法政大の佐藤(20番)。鮮やかな直接FKを沈めた。写真:安藤隆人

 ボールを丁寧にセットした時、法政大FW佐藤大樹の眼光は鋭くゴールに向けられていた。総理大臣杯決勝において法政大は11分に先制を許すも、41分にMF松井蓮之のゴールで追いつき、1−1のままで後半アディショナルタイムを迎えていた。

 後半は相手をシュート1本に抑え込み、逆に7本のシュートを放つも相手の堅い守備をこじ開けられない状況にあった。佐藤自身も2本のシュートを放っていたが、84分の決定機ではシュートを相手DFの捨て身のディフェンスで阻まれ、チャンスをものに出来ないでいた。
 
「僕自身、なかなか点が取れていなくて、何がなんでも点が欲しいと思っていた」

 90+3分、中盤で交代出場のMF中川敦瑛がボールを持った瞬間にパスコースが見えた。いつもならそこにすぐに走り込んでボールを受ける準備をしていた。だが、この時は違った。先に相手CBに身体を当てるアーリーヒットをして、相手のバランスを崩すだけではなく、見えていたパスコースをより確実なものにすると、中川敦から糸の引くようなスルーパスが届いた。佐藤は相手DFと完全に入れ替わる形で抜け出すと、足をかけられる形で倒され、ファウルを受けてFKを獲得した。

 FWとして「そのままGKと1対1になって決め切りたかった」というのが本音だが、倒された瞬間に「4年生である僕らが勝たせないといけないという使命を感じた」と、そのままキッカーに名乗り出たのだった。

 位置はゴール右斜め45度。普段であればこの位置はレフティである田部井が蹴るのだが、田部井は初戦のIPU・環太平洋大戦の試合前アップで負傷し、約2か月の離脱を強いられてしまった。キッカー不在で、かつ左利きは佐藤とDF今野息吹のみ。そうであれば中学以来ほとんど蹴ったことはないが、ストライカーとしての責任がある自分が蹴るしかない。あの鋭い眼光はその覚悟の表われだった。

 助走を取り、右で蹴るように助走を始めたMF吉尾虹樹がフェイクを入れた瞬間、GKが少し右に動いたのが見えた。その瞬間、ダッシュを始めた佐藤は迷わず左足を一閃。インフロントにかけて激しく擦り上げたボールは、「イメージ通り」と自画自賛するように壁の左を巻いて、ゴール左サイドネットに突き刺さった。

 3回戦の日本文理大に次ぐ今大会2ゴール目は、チームを3大会ぶり5度目の優勝に導く値千金の決勝弾。最後の最後でエースストライカーの面目躍如を果たした。
 

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