前半は“強者”だった日本だが…綱渡りのようだった中国戦での光明は【コラム】

2021年09月08日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

後半は丁寧に入りすぎたせいで、相手に流れを渡してしまった感がある

エウケソンら帰化選手には決定的な仕事をさせなかったが、後半は主導権を握れたとは言い難い。綱渡りのような試合だった。(C)Getty Images

 日本代表はワールドカップ最終予選の2戦目で中国に1-0の勝利。初戦のオマーン戦での黒星のショックから立ち直るきっかけは掴んだと言える。

 ただし、その試合内容に不満が残ったのも事実だろう。

 キャプテンの吉田麻也は試合後に以下のようにコメントしている。

「勝点3を取りましたけど、物足りないところもたくさんあった。1-0でギリギリだったので、もっと良い展開で追加点を重ねられるようにしたかった。もっともっと上げていかないといけないと思っていますし、プレッシャーもかなりありましたけど、そのなかでも自分たちの良さを出すことを意識して、気持ちの面の準備も非常に良かったです。これがスタンダードにならないといけないと思っています」

 確かに前半は、オマーンで敗れた初戦の失態を取り返そうという気概を窺わせるパフォーマンスだった。ゴールに向かう姿勢は初戦のそれとは明らかに違い、テンポの良いパスワークを展開。柴崎岳や遠藤航の2ボランチだけでなく、CBの吉田麻也や冨安健洋から出る縦パスも鋭く、効果的だった。まさしく日本は"強者"と呼べた。

 ところがフィニッシュの精度に欠け、1ゴールに留まったのはいただけない。後半に関しては、主導権を掌握したとすら言い難く、62分に中国がアラン、アロイージオという帰化選手を投入してきてからは押される時間もあった。
 
 相手が前がかりに来る展開は、リードして折り返した時点で予測はできたはずだ。ならば、後半の立ち上がりに追加点を取りに行く強気な姿勢が必要だった。

 もちろん追加点を狙っていなかったわけではないのだが、前半の勢いが失われていたのは明白。丁寧に入りすぎたせいで、相手に流れを渡してしまった感があるのだ。そのうち、大迫勇也や柴崎、遠藤など疲労が色濃く見えた選手も現われ、なかなかボールを前に運べなかった印象だ。

 結局、最後はバタバタでなんとか1点を守り切る――まるで綱渡りのようで、ファン・サポーターからすれば安心して見られる試合ではなかった。

 光明だったのは、伊東純也と久保建英の個人技くらいだっただろう。とりわけ伊東は試合の流れを変える決定的な仕事をしてみせた。

 先制点がなかなか奪えなかった前半には、40分に持ち前のスピードを生かして相手振り切り、鋭いクロスで大迫勇也のゴールをアシスト。さらにボールを保持できなくなりつつあった後半62分には、ピッチ中央でボールを奪い、久保のシュートチャンスを演出した。

 そんな伊東が累積警告のため次戦に出場できないのは痛恨だ。10月シリーズはサウジアラビアとオーストラリアという難敵との連戦となる。難局が続く最終予選、森保一監督はどう乗り切るのか。

文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

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