【コパ・アメリカ現地レポート】昨夏の悪夢を思い出す……敗北、そしてエースを失った哀れなブラジル

2015年06月18日 熊崎敬

足元をすくわれたのではなく、互角に戦って押し切られた…。

対コロンビアでは、1991年のコパ・アメリカ・グループリーグ(0-2)以来となる敗北を喫したブラジル。24年前は決勝リーグで雪辱(2-0)を果たしたが、今回、大きなダメージを負った彼らは、ここから勝ち上がってリベンジの機会を得られるだろうか。 (C) Getty Images

【コパ・アメリカ2015】
グループC
●ブラジル 0-○コロンビア
[得点者]コ=ムリージョ(36分)
 
 初戦で格下ベネズエラに敗れて崖っぷちに立たされたコロンビアが、ブラジルとの大一番を制した。
 
 これで両者は、1勝1敗。明日、ペルーがベネズエラを下せば、全てのチームが勝点3で並ぶという大混戦となる。
 
 ブラジルとコロンビアの顔合わせは、昨年のワールドカップ準々決勝でもぶつかった因縁の対決。昨夏は開催国ブラジルが2-1で勝ったが、ネイマールがスニガのタックルで病院送りにされた経緯がある。
 
 ワールドカップがそうだったように、コパ・アメリカの一戦も、中盤でのアップテンポな攻防が続く、目の離せない展開となった。
 
 唯一のゴールは36分、CKから生まれた。右CKがこぼれたところをムリージョが落ち着いて押し込む。結果的に、これが決勝点となった。
 
 ベスト8に望みを繋いだコロンビアにとって心強かったのは、スタンドをゴールド一色に染めた同胞たちの存在だろう。
 
 聞くところによると、コロンビアでは昨年のワールドカップ8強で、国中のサッカー熱に火が点いたという。経済状況も悪くはないため、多くのサポーターたちが優勝を夢見てチリに駆けつけているのだ。この夜はホームで戦っているに等しく、ブルーのブラジルが哀れなくらい孤独に見えた。
 
 それにしても、ブラジルにとってはつらい敗戦となった。
 
 引き分けでも悪くなかったが、44分のネイマールの決定的なヘッドはGKオスピナに阻まれ、57分にはフィルミーノが信じられないシュートミスで絶好機を逃してしまう。目の前にはGKが出払ったゴールが口を開けていたのに、シュートはクロスバーを大きく越えてしまった。
 
 終盤、ブラジルは細かいパスを繋いでコロンビアゴールを攻め立てたが、決定機を創り出すには至らなかった。パスは横へ横へと回り、頼みのネイマールも縦に切り込めず、横へと走らされた。コロンビアの懐に潜り込む場面は、ほとんどなかった。
 
 ブラジルにしてみれば、コロンビアは格下のようなものだ。過去27戦して17勝8分け2敗。ほとんど負けていなかった相手に、3敗目を喫した。しかも、圧倒的に押していて足下をすくわれたわけではなく、互角に戦って押し切られた。
 
 ネイマールが輝かなければ、ブラジルは輝かない。ワールドカップの「1-7」以来、カナリア色のユニホームは、かつてのオーラを失いつつある。
 
 ブラジルにとって痛いのは、敗戦とともにネイマールが退場処分を受けたことだ。試合終了とともに両イレブンが激しく揉め、ネイマールとコロンビアのバッカにレッドカードが突きつけられた。これでブラジルはエース不在で、ベネズエラ戦を戦わなければならなくなった。
 
 この状況は、1年前の悪夢を思い起こさせる。
 
 ワールドカップのブラジルは、前述したようにコロンビア戦でネイマールが傷つき、エース不在で戦う羽目になったドイツ戦で惨敗した。ネイマール抜きで迎えるベネズエラ戦、ブラジルは王国の威信を示すことができるだろうか。
 
現地取材・文:熊崎 敬
 
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