板倉滉はA代表コンビに割って入れるか?大舞台で示した冷静さと情熱【東京五輪】

2021年08月08日 林 遼平

ニュージーランド戦のPKキッカーに立候補

冨安の負傷欠場を感じさせない活躍でチームを救った板倉。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 U-24日本代表にとって、欠かせない存在だった。

 A代表でもレギュラーを務める吉田麻也と冨安健洋がいるため、当初はベンチでチャンスを伺う立場だった。しかし、初戦の南アフリカ戦の前日の練習で冨安が負傷。最終ラインの中心となる選手の怪我は、チームに大きなダメージを与えてもおかしくなかった。そんな難しい状況を救ったのが板倉滉だ。先発で南アフリカ戦のピッチに立つと、チームのため、勝利のために戦った。

「常日頃からスタメンを狙ってやっていますし、こういうチャンスが来た時にしっかり自分のプレーができるように意識して練習に取り組んでいた。いつ、どのタイミングで出番が来ても自分のプレーを出さないといけないし、まずは最低限、勝点3を獲らなくてはいけないと思っていた」

 南アフリカ戦では対人の強さを発揮して、相手の攻撃をシャットアウト。続くメキシコ戦では、左SBの中山雄太とうまく連動して敵のエースを止めるなど、自分の力を大舞台で証明した。
 
 この世代を長く牽引してきた板倉の強い思いが一番表われたのは、準々決勝のニュージーランド戦だ。PK戦前の円陣で、キッカーを志願した。

「決められる自信があったので、蹴りたいと言いました」

 ゆっくりとPKスポットに向かい、ボールを置く。頭の中にはさまざまな思いが駆け巡った。

「今まで一緒に戦ってきたメンバーや国民のことが浮かんで、ここで負けられないぞという思いが乗っかりました」

 大会直前にはこう言っていた。

「自分はこの4年間でいろんな選手とやってきましたけど、今までみんなで積み上げてきたものを、みんなの代表として出さないといけない責任があると思っています」

 冷静にPKを沈めたあと、鬼気迫る表情で吠える姿からは、チームを引っ張ってきた男の思いが伝わってきた。

 ピッチ外ではチームを盛り上げ、ピッチ内では安定感あるプレーを披露した。最後までチームのことを考え、働き続けた男は次のステージでも欠かせない存在となれるか。

取材・文●林遼平(フリーライター)

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