【中断明けの青写真|湘南】求められる“ビジョンの共有”。いかに得点を奪い、いかに勝ち切るか

2021年08月05日 隈元大吾

意図的に決定機を生み出すプロセスを深めたい

東京五輪で活躍を見せている守護神の谷。大舞台での貴重な経験を活かし、リーグ再開後も頼りになるパフォーマンスを期待したい。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 東京五輪開催でJリーグは一時中断。その間、各チームは戦力補強やミニキャンプ実施など、再開後に向けて準備を進めている。五輪後はいかなる戦いを見せてくれるか。ここでは、J1の湘南ベルマーレを取り上げる。

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 4勝9分9敗と、黒星が先行する。得点21も下から数えたほうが早い。それでもできるかぎり失点を抑え、J1でのクラブ記録となる8試合連続負けなしを果たすなど、ここまで地道に勝点を積み上げてきた。リーグ最多タイの9引き分けは、選手たちの粘り強いプレーによって負けない戦いを築いてきた証左だろう。

 反面、中断期間に入る直前に喫した3連敗に、課題も浮き彫りとなっている。

 2-4で敗れた第20節の柏レイソル戦は、90分まで2-1とリードしながら後半アディショナルタイムに3失点を喫した。また1-3に終わった第21節のヴィッセル神戸戦は、先制からわずか5分で追いつかれ、さらに後半に引き離された。中断前の締めくくりとなる第22節のFC東京戦は逆に1点が遠く、ゲーム終盤に失点し、0-1で苦汁をなめた。

 柏戦と神戸戦はいずれも先制しながら逆転負けを喫した。付け加えれば、続く天皇杯3回戦も、J3ヴァンラーレ八戸を相手に先制しながらまもなく追いつかれ、延長戦までもつれ込んでいる。これらの試合然り、今季は先取点を取った場合の結果が3勝1分4敗と優位に立てていない。

 負けない戦いから勝ち切る戦いへ、得点力の向上や戦況に応じた方策を含めて、勝点3を取るためのビジョンの共有が求められる。
 
 この中断期間中には移籍も発表された。2018年にルヴァンカップ初優勝に貢献し、今季は主将のひとりとして精神面でもチームを支えてきた梅崎司と、今季加入し開幕からアンカーとして重用されてきた中村駿が新天地へと旅立ったのだ。

 彼らの不在は大きいに違いない。だがそれでも、タフな戦いを勝ち抜けるだけの個性は揃っているはず。トレーニングから積極的に意見を交わす選手たちの前向きな姿勢によってポジティブなムードが醸成されていることも得難い。

 いかに得点を奪い、いかに勝ち切るか。無得点で敗れた前述のFC東京では、筆者の見るかぎり決定機と呼べるシーンは前後半に一度ずつしかなかった。すなわち、ゴール前の精度の向上はもとより、意図的に決定機を生み出すプロセスをチームとして深めたい。

 降格圏の17位・徳島ヴォルティスとの勝点差はわずか1と、待ったなしの状況にある。中断期間の充実と中断明けの巻き返しに期待したい。

取材・文●隈元大吾

【PHOTO】力強い手拍子!選手を鼓舞し続けた湘南ベルマーレ・柏レイソルサポーター!
 
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