決勝Tの240分間で無得点。森保監督が修正しきれなかった“誤算”【東京五輪】

2021年08月04日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

「身体はぼろぼろだった」と堂安は明かす

延長戦を前に堂安と久保を同時に下げた森保監督。だが、この大胆な策も実らなかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[東京五輪 準決勝]U-24日本0-1U-24スペイン/8月3日/埼玉スタジアム2002

 優勝候補筆頭と死闘を演じ、U-24日本代表は力尽きた。115分に奪われたゴールを、取り返す力と時間は、残っていなかった。

 その気持ちの籠った戦いぶりは素直に称えたい。ただ、「スペインを追い詰めたか」と言えば、そうでもなかった。シュートはDFにブロックされるか、枠外に飛び、GKウナイ・シモンを脅かすシーンはほとんどなかった。途中出場の相馬勇紀が「最後のクオリティの差に、勝ち進めるのか進めないのかというところを感じた」と語ったように、やはり「決めるか決めないか」というところで勝負は決した。

 大会が始まる前から、酒井宏樹、吉田麻也、冨安健洋、中山雄太で構成する最終ラインの前に、遠藤航と田中碧が位置する日本の守備ブロックは、出場国中最高ではないかと思っていた。実際、準々決勝を終えて4試合1失点で、タレント揃いのスペインも115分まで0点に抑え込んだ。故障と出場停止で冨安が3試合を欠場しても、酒井が累積警告になっても、板倉滉や橋岡大樹がその穴を埋めて見せた。

 一方で、グループステージ3試合で7ゴールの攻撃陣は、決勝トーナメントに入ってから沈黙。PK戦で勝利したニュージーランド戦も含め、計240分間で1ゴールも奪えなかった。

「身体もぼろぼろだったので、代わって正解だった」とこぼした堂安律と、明らかに疲れの見えた久保建英は延長戦を前に交代。攻撃面ではこのWエースに頼ってきたチームは、それでも代わって入った前田大然や三好康児がチャンスを作り出したが、スペインの牙城を破ることはできなかった。
 
 オーバーエイジを吉田、酒井、遠藤という3人にし、まず守備を安定させるという森保一監督のプランは見事に的中した。ここまで勝ち進めたのは、その3人がいたからだ。

 一方で、取り沙汰されていた大迫勇也のオーバーエイジ招集を見送ったFW陣(林大地、上田綺世、前田大然)が挙げたゴールは、前田がフランス戦で終了間際に決めたダメ押し点のみ。森保監督にとって誤算だったのはエース候補の上田が大会前に故障したことだろう。本番には何とか間に合わせ、先発したフランス戦では好プレーを見せたものの、キレを欠いた試合もあり、まだ本調子とは言えない。

 その間、3番手から一気にレギュラーの座を掴んだ林は、前線からの激しいプレスや、シンプルに2列目を活かすプレーは称賛に値するが、ストライカーとしては物足りない部分もある。結果、堂安と久保が動けなくなった時点で、敵を攻略する術が半減してしまった。

 この大会では打つ手が当たっていた森保監督も、この点は修正しきれなかった。登録メンバーが22人に拡大したタイミングで、CBを一枚削ってアタッカーを入れる選択肢はあったが、いまとなっては結果論だ。ただ、グループステージとはまったく違う戦いとなる決勝トーナメントで、一度もネットを揺らさずに勝ち上がることはできない。

 6日に行なわれるメキシコとの3位決定戦。「故障をしても選んでくれたことに感謝している」と語った上田が、指揮官にその恩返しできるのは、もうこの試合しかない。

取材・文●江國森(サッカーダイジェストWeb編集部)

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