【浦和】「黄金期」を知る鈴木啓太が歩む模索の日々

2015年06月08日 寺野典子

11節ぶりの出場にも、自分のやるべきことを淡々と。

76分、鈴木は足をつった岡本に代わってピッチへ。最終ラインに気を配りつつ、セカンドボールを拾い続けた。 写真:徳原隆元

「やっぱりいいものですよね」
 
 第1ステージ15節・清水戦の勝利後、埼玉スタジアムのピッチに整列し、浦和サポーターの歓喜の大合唱を聴く。4節の松本戦以降、試合出場から遠ざかっていた鈴木啓太は、そのシーンを振り返り、さらりと応えた。

【J1 PHOTOハイライト】浦和 1-0 清水

しかし、秒読みとなった第1ステージ優勝へ向けた一戦に出場できたことについて、特別な想いはなかったようだ。
 
「試合に出られた喜びがないわけじゃないけれど、公式戦のピッチに立つのはもっと大きなものがあるから。ただ純粋に、サッカーを楽しむという感じではない」
 
 昨季終盤に発覚した不整脈を、投薬治療でコントロールしながらシーズンを送っている。先発はおろか、ベンチ入りもできない試合も少なくない。
 
「試合に出たいという気持ちはもちろんある。でも、まずはチームが試合に勝つこと。そのために自分の立場でできることをしっかりとやらなくちゃならない。僕ら控え組がしっかりと練習、仕事をすることが、試合に出る選手たちの力にもなるはず。そういう大きな意味では、チームに貢献できているのかもしれないけど」
 
 その表情から、鈴木が抱える複雑な心境が伝わってくる。
 
 森脇良太の欠場もあり、6月3日の柏戦に続くベンチ入り。76分に岡本拓也に代わり、「いつでも出られる準備はしていた。僕が起用されるのはリードしている展開。やるべきことは分かっている」と、満を持してピッチに立った。
 
 1-0で進む試合終盤、自陣へ迫ってくる相手の攻撃をいかに寸断させられるか。押し込まれた最終ラインに気を配りながら、セカンドボールを拾い続けた。
 
「試合内容が悪くても気がつけば勝っている。2006年のレッズはそういうチームだった。そういう意味で、今季は勝ち切ることができるチームになってきた。そこが大きな進歩だと思う」

次ページ今、かつて自身をバックアップしてくれた先輩たちの立場に立って。

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