「フラッグ!」三笘に飛んだ指示がメキシコ戦終盤の苦境を象徴。しっかり勝ち切るなら久保を残すよりも…【東京五輪】

2021年07月26日 加部 究

【采配検証】メキシコ戦のスタメンは理に適ったチョイスだった

後半途中に投入された三笘。終盤はコーナー付近へ持ち出すことを求められた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 的確な分析を基盤に、森保一監督を筆頭に日本の指導者の大半が愚直に繰り返した「ハードワーク」「球際」「走力」で相違を生み出した勝利だった。そういう意味では日本サッカーの志向と選手個々の特性が表われたとも言えるが、これまでメキシコには戦略面やしたたかさで違いを見せつけられてきただけに、負の歴史を断ち切ったという見方も出来る。

 特に前半の日本は、最前線からの労を厭わない積極的なプレッシングでメキシコのビルドアップを混乱に陥れ、効果的なカウンターを繰り返した。ポゼッションの数字だけを見れば優勢だったメキシコは、逆にライネスを中心に個々のボールの保持時間や状況把握までの時間が長く、むしろ攻撃は停滞した。また、だからこそ最前線の林大地、相馬勇紀までが盛んに戻って来るサポートが効果を示した。

 森保監督は開幕の南アフリカ戦から、他にも選択肢を持つ1トップ(林)と左サイドバック(中山雄太)を継続し、左MFだけを三好康児から相馬に変えた。前線からのハードワークと、メキシコの攻撃の起点となる右サイド(日本の左サイド)の守備に強度が必要だったことも踏まえれば、理に適ったチョイスだった。
 
 弾みをつけたのは、開始2分の遠藤航の矜持と戦闘意欲に満ちたプレーだった。左サイドで自信満々の10番ライネスからボールを奪い取ると、すかさず寄せて来たロドリゲスもかわして相馬への縦パスを入れた。結局日本は悪条件下でのJリーガーの大奮闘に、欧州組が質、経験、それに自信を加味して結果を引き出した。最後尾の吉田麻也から酒井宏樹、さらにはハーフスペースへ飛び出す堂安律へと繋いで、フルスプリントする久保建英に合わせた先制点などは典型で、20分過ぎには林がセンターバック(CB)に圧力をかけると、久保がアンカーのロモへのパスコースを狙い撃ち。さらには遠藤が中盤でロモからインターセプトすると、そのまま躊躇なく加速して運び、右サイドの堂安からのチャンスを演出した。メキシコの両CBから自由を奪い、アンカーへのパスを寸断してカウンターに出る。後半田中碧のパスで堂安が裏に抜け、後手に回ったバスケスを一発レッドに追い込むまでの戦い方は、心地よくシナリオ通りに進んだ。実際にメキシコは10人になった直後に、すっかり空回りした10番のライネスを下げている。
 

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