「ファイナルに慣れていなかった」英国人記者が考える、イングランド敗北の理由【現地発】

2021年07月14日 スティーブ・マッケンジー

「経験のなさを露呈してしまった」

PK戦で敗れ、肩を落とすイングランド代表の選手たち。(C)Getty Images

 想定されていた"ハングオーバー・マンデー"は結局、実現しなかった。7月11日に行なわれたEURO2020の決勝戦で、イングランドがイタリアに敗れたからだ。

 試合を見ていた私は、開始2分でイングランドが挙げた先制ゴールに喜んだ。だが、主導権を握っていたのは20分までで、それ以降は圧倒的にアッズーリが優勢だった。PK戦までもつれ込んだが、イタリアが勝利したことには何の疑問も、不満もなかった。

 イングランドは1試合を除いてすべてホームで戦い、新型コロナウイルスの感染拡大も何のその、スタジアムには大勢のサポーターが詰めかけた。誰よりも浮かれていたのはファンで、その熱意に選手たちも感化され、優勝への期待は最高潮だった。絶好のチャンスでもあった。

 だが、決勝で「It’s Coming Home」と歌うことはできず、イタリアのファンが「It’s Coming Rome」と声高に歌った。それが現実だ。負けた相手は33試合無敗を誇る強固なチームだったのだから、恥じる必要もない。
 
 正直な話、イングランドは半世紀以上も、大舞台での"決勝"に進出していない。ガレス・サウスゲイト監督を含め、チームはその経験のなさを露呈してしまったと感じた。戦い方も、振る舞いも、どこかぎこちなさが漂っていた(イタリアにはそれがなかった!)。

 サウスゲイト監督の判断も、決勝までは何も間違っていなかった。メディアやファンも彼の選択を支持し、戦術とマネジメントの手腕は称賛された。一部のメディアでは、爵位を授与されるなんて話が浮上していたほどだ。結局、決勝での采配で評価は一変してしまったが……。

 決勝後の会見で、サウスゲイトはカタール・ワールドカップ予選でも指揮を執るつもりだと口にしたが、それでいいと考えている。

 悔しさは残るが、私も含めて、大半のファンはこの結果をあまり悲観はしていない。ブサヨ・サカ、ジェイドン・サンチョ、メイソン・マウントといった若くて才能ある選手がたくさんいるので、このチームには将来性がある。身を引き裂かれるような敗北は、今はそう思えなくても、良い経験になるはずだ。

 また、ファイナルが終わった後、ネット上で選手への誹謗中傷などがみられたが、英国政府はようやく重い腰を上げて対応するようだ。SNSでの目に余る投稿をした者に対しては警察の捜査のメスが入る。愚かな人々に罰を与えられる日は、遠くないと信じている。

取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカー・ダイジェスト)
 
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