《6.11開幕》 コパ・アメリカはだから見逃せない!

2015年06月02日 熊崎敬

南米サッカーには歓びや驚きが色濃く残されている。

2011年の前回大会は、フォルラン(右)、カバーニ(左)、スアレス(背中)が牽引したウルグアイが6大会ぶり15回目の戴冠。必勝を期した開催国アルゼンチンはそのウルグアイに敗れ、ブラジルとともに準々決勝で姿を消した。 (C) Getty Images

 6月11日、第44回コパ・アメリカがチリで開幕する。
 コパ・アメリカは、いまからおよそ百年前の1916年に産声を上げた。ナショナルチームによる大陸選手権としては世界最古の大会で、1930年に生まれたワールドカップより歴史がある。
 
 南米の人々にとって、コパ・アメリカは一世紀にわたって脈々と続けられてきた祝祭だ。この大陸には教会のない村はあっても、サッカー場のない村はない。休日になると、どこからともなく男たちが現われてゲームが始まる。どんなに貧しい集落でも、ゲームは絶えることなく続けられてきた。
 
 その名もないサッカー場から、ペレ、ジーコ、マラドーナ、フランチェスコリ、バルデラマ、チラベルといった歴史に残るクラッキ(名手)が次々と生まれた。
 
 南米から生まれるクラッキは、だれもが際立った個性を備えている。彼らは徹底して勝負にこだわりながら、一瞬のプレーによって観る者をファンタジーの世界にいざなう。それは厳しい日常を生きる南米の人々が、サッカーに勝利だけではない夢を求めているからだ。
 
 大人たちの真剣な遊びであったサッカーは、21世紀になって巨大なビジネスへと姿を変えた。結果ばかりが重視されるようになり、気まぐれな芸術家よりも勤勉で頑丈な労働者がピッチで幅を利かすようになった。
 
 それでも南米のサッカーには、いまも歓びや驚きが色濃く残されている。
 チャンピオンズ・リーグ決勝の舞台に立つバルセロナには、メッシ、ネイマール、スアレスという危険極まりないトリオがいて、対するユベントスにもテベスやビダルといった曲者がいる。
 
 ワールドカップで噛みつき事件を起こしたスアレスの欠場は寂しいが、路地裏の少年の精神を忘れない男たちが祖国のユニホームに袖を通し、名誉を賭けて戦うのだ。面白くならないわけがない。
 
 ようこそ、コパ・アメリカへ。真冬のチリで究極の決闘が始まる。
 
文:熊崎敬






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