連勝で締めるも……最後まで「自分たちの武器」を見せられなかったミラン――アタランタ 1-3 ミラン

2015年05月31日 サッカーダイジェストWeb編集部

両チームが低迷の原因を露呈するかたちで進んだ最終節の戦い。

浮き沈みの激しい、厳しいシーズンを終えた本田。昨夏よりは休息もとれるはずであり、まだ去就は確定していないものの、ミランでの3年目が早くも楽しみだ。 (C) Getty Images

 セリエA最終節、ミランは敵地でアタランタに3-1で勝利し、2連勝でシーズンを締めた。2014-15シーズンの最終成績は、13勝13分け12敗(勝点52)・56得点50失点というものだった。
 
 同じロンバルディア州のクラブというダービーマッチは、17位のアタランタが主導権を握る。スピーディーで迷いのないサイド攻撃からミランの守備陣を脅かし、21分にはマキシミリアーノ・モラレスのクロスを、走り込んだダニエレ・バゼッリが頭で合わせてホームチームが先制点を奪った。
 
 ミランは勢い良くゴール前に走り込むアタランタの攻撃陣をマークしきれず、先制点を献上する前にも、ヘルマン・デニスにクロスバー直撃のヘッドを食らうなど、シーズンを通して自身を苦しめた守備面での不安定さをここでも晒した。
 
 また攻撃では、相手ゴールに近い位置で複数の選手が連動した動きを見せられず、効果的にパスを繋ぐこともできずにいた。
 
 本田圭佑は定位置の右サイドでスタメン出場を果たすが、SBマッティア・デ・シリオとのコンビが機能せず、徐々にその意識は右サイドからの崩しよりも、逆サイドへのパス、あるいは自身のポジションチェンジに移っていった。
 
 36分、ステファン・エル・シャーラウィがペナルティエリア手前で前方のジャンパオロ・パッツィーニにパスを通すと、反転してシュートに持ち込もうとしたパッツィーニが倒されてPK。ストライカー自ら決め、ミランは同点とした。
 
 さらにその2分後、再びエル・シャーラウィが相手ゴール前にボールを流すと、これに反応した本田は体勢を崩すも、こぼれ球をパッツィーニがシュート、ポストに跳ね返ったところを、ジャコモ・ボナベントゥーラが詰めて勝ち越しに成功した。
 
 前半のうちに逆転したのは今シーズン初。ミランにとって得点こそが最大の特効薬であり、これ以降は序盤のようなピンチを迎えることなく時間を過ごし、攻撃は効果的ではなかったものの、80分にはアンドレア・ポーリのクロスにマルコ・ファン・ヒンケルが反応してこぼれたところを再びボナベントゥーラが決め、この時点で勝負を決めた。
 
 アタランタは後半に入ると、目に見えてチーム全体の動きとスピードが落ち、組織としての怖さが半減。個々の突破力に手段が限られ、ミランを楽にしてしまった。序盤戦のプレーを見ると、セリエA残留を争っていたのが不思議に思えるほどだったが、90分間での試合の構成力の低さが、彼らの今シーズンを反映していたのかもしれない。
 
 一方、最終節をモノにしてシーズン勝ち越しを決めたミランだが、アタランタと見比べても、明確な攻撃の形を持たず、最後まで何がミランの武器なのかが分からないまま歴史的な暗黒のシーズンを終えることとなった。
 
 終わってみれば、低迷した両チームが、その原因を露呈するかたちとなったシーズン最終戦。悪い状況を打開する力を持たない者同士の戦いに、スタジアムは観客数の割に盛り上がりに欠け、試合後には冴えない表情の両チームの面々の姿があった。
 
 ミランの今シーズンの1試合平均獲得勝点は1.37。最終節で敗れていれば、シルビオ・ベルルスコーニ体制で最も不振を極めた1997-98シーズン(18チーム中11位)と同じ数字(1.29 ※最低は同じく11位だった前シーズンの1.26)まで落ち込むところを何とか持ち直したが、それでも悲惨な成績だったことに違いはない(昨シーズンは1.50)。
 
 本田は序盤戦こそチームの救世主であり、牽引役でもあったが、その後はコンディション不良もあって評価が下落し、出場機会も限られるなど苦しい時期を過ごした。終盤戦で再びその存在感を示したものの、総じて見れば、歴史的な低迷に見舞われたチームにおいて、背番号10は責任を問われる立場にあると言えよう。
 
 献身的な姿勢はシーズンを通して変わらず、パス出し、フィジカルの強さ、ボールキープなどで良さを見せ続けたものの、時折見せるボールコントロールの拙さやキックの精度の低さなどが、周囲や見る者に不安を与えた。周囲の状況によって、プレーの選択肢が著しく少なくなるのも、ミラニスタにとっては物足りなかったことだろう。
 
 新シーズン、ミランがどのような体制(フロントも現場も)を敷くかも決まっておらず、本田の残留もはっきり決まっているわけではないが、一部では"新生"ミランの柱として期待される彼が束の間の休息を経て、どのような進歩を見せるか。堕ちた名門クラブの再建への歩みとともに、興味と楽しみは膨らむ一方である。
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