J複数クラブも注目した逸材が家長昭博の後継者に? 王者・川崎に入団内定した興國高の左利きアタッカーはいかなる選手か

2021年06月16日 森田将義

興國・内野監督は「歴代のアタッカーでも一番」とテクニックを評価

来季の川崎入団が内定した永長。その技術は指揮官も「歴代で一番」と絶賛する。写真:森田将義

「プロに行きたいという気持ちはずっと思っていたけど、まさか本当になれるとは思わなかった」

 そう口にするのは、16日に来季から川崎フロンターレに入団されることが発表された興國高のMF永長鷹虎(3年)だ。本人が驚くのも無理はない。これまでに世代別代表の経験はなく、中学時代も地区選抜止まり。全国大会への出場経験もないため、無名の存在と言っても過言ではない。昨年からチームでスタメンを務めるものの、本領を発揮し始めたのは今年に入ってから。他の注目選手に比べて遅れをとったが、10チーム近くのJクラブが興味を示した左利きのアタッカーだ。

 武器は数多くのJリーガーを輩出してきた内野智章監督が「歴代のアタッカーでも一番」と一目置くテクニックを活かしたドリブルだ。

「ドリブルばっかりやっていた」という中学までに身につけた柔らかなボールタッチ。それを活かした突破の切れ味は十分だ。ゴール前でのアイデアも豊富で、得点に直結する働きができるのが特長である。

 高校に入学した直後は球離れの遅さが目立ったが、戦術的なプレーを身につけるうちにパスとの使い分けが上手くなり、相手にとってより怖い選手へと成長した。また、学年が進むにつれて技術に身体の成長が追いついてきたのも、彼にとっては大きかった。ステップワークのトレーニングに励んだ甲斐もあり、課題だったスピードも格段にアップ。突破力に磨きがかかっただけでなく、「これまでは抜かれて終わりだったのが、すぐに追いつけるようになった」と前線からの守備でも力を発揮できるようになった。
 
 内野監督が「試合でたまたま活躍するんじゃなく、練習から止まらない」と口にする通り、今年に入ってからのプレーは風格すら漂う。永長の評判は瞬く間にJのスカウトの間で広まり、今春にはセレッソ大阪の練習に参加した。中でも熱心だったのは、J1王者の川崎だ。6月上旬に行なわれたインターハイ予選の準々決勝終わりに誘いを受けた永長は、「興國と同じ攻撃的なサッカーをしているのが魅力だった。こんなに上手いチームが日本にあるんだなって思いながら、試合を見ていた。日本トップクラスの環境で練習できるだけでも、絶対に上手くなれる。自分が現段階でどこまで通用するか試してみたい」と加入を即決した。

 直後には、他のJ1クラブからも熱烈なアプローチを受けたが、「2チームともとても魅力的なチームだったので正直、どちらにも行きたかった。でも、話をもらった時点でフロンターレに行くと決めていたので気持ちは変わらなかった」。
 

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