浦和はなぜ酒井宏樹が必要だったのか? 西野TDが明かす「レッズに課された責任」

2021年06月15日 サッカーダイジェストWeb編集部

「複数ポジションを視野に入れているのは間違いない」

酒井も浦和の熱意を感じ、「いままでと同じように必ず成功させるという強い思い」で移籍を決断したという。(C)URAWA REDS

 浦和レッズは6月14日、10日に加入が発表された日本代表DF酒井宏樹の加入会見を行なった。

 欧州のビッグクラブ、フランスのマルセイユから現役の日本代表選手を獲得するという超大型補強はなぜ実現したのか。

 酒井の加入会見後に行なわれた、西野努テクニカルダイレクターによる説明でその全容が明らかになった。

 浦和が酒井獲得に興味を持ちだしたのは、2019年12月の西野氏のTD就任直後だったという。翌シーズンの獲得リストを作成する際に、「こういう人が来てくれればいいな」というレベルから始まった。その後、トランスファーウインドー期間中に日本復帰の意向があるという情報が耳に入るものの、「と言っても無理だよねっていうレベルだった」。

 それでも酒井獲得を模索し続けたのは、「このチームに、このパーツが必要ということではなく『3年計画』その先を見据えた時に、レッズがアジアの舞台でトップレベルを維持するチームになるために」という考えからだった。「チームに要、不要というよりは、こういう選手がいて欲しいという希望から始まっています」と明かす。

 調査を進めながら、獲得に現実味を帯びてきた段階になって、リカルド・ロドリゲス監督に初めて話をすると、「是非、何がなんでも獲ってほしい」という強い要望を受けたという。
 
 一方で、チームは今季神戸から西大伍を、先月末にはデンマーク代表歴もあるDFアレクサンダー・ショルツも獲得している。現有戦力も含めて、代表クラスの選手たちが出場できない事態も想定されるが、西野TDはこう明言した。

「(一度に出れる)ポジションは11個しかないですが、今季の浦和の戦いを見てもらえれば分かるように、15~17選手くらい、同じクオリティの選手が必要だと思っています。来年ACLに出場するという前提で考えれば、ワールドカップもあるので、日程も相当ハードですし、11個のポジションという考え方はしていないです」

 さらに、ポジションの重なる西との同時起用についても、「もちろんです。全然あると思います。3バックというのは頭の中にいつもありますし、今季も試合の流れのなかでは3枚になったり、4枚になったり、可変的なことをやっているので、そういった意味では3枚の右だったり、もしくはウイングバック的な位置だったり、ここというポジションじゃなくて、複数ポジションを視野に入れているのは間違いないです。西選手も同じです」と全て考慮した上での獲得だという。

 そんな酒井を加えて、浦和が目指しているのは真のビッグクラブへの道だ。

 2019年末に発足した、戸苅淳フットボール本部長、土田尚史スポーツダイレクター、西野TDの新強化体制の下、22年のJ制覇を目指す「3か年計画」を発表。さらにその後は「安定した優勝争い」「リーグ連覇」を見据えた長期目標も打ち立てている。

 西野TDは、「リーグの優勝は必ずしなきゃいけないと思っていますし、したいと思っていますし、できると思っています。その先はリーグの連覇とかACLの優勝。その先にクラブワールドカップという舞台がある」としたうえで、酒井獲得の背景にはクラブとしての戦略的な視点があるという。

「浦和レッズに課された責任というのは、日本のトップクラブであること、イコールアジアのトップクラブであることだと思っています。そういった視点で、例えば酒井選手の補強とかもJリーグにはもったいないんじゃないかという声も聞こえてくるんですが、そうじゃないんです。アジアを見ています、世界を見ています。彼くらいの選手がひとりいるだけじゃもしかしたら十分じゃないという世界が、3年後、5年後にあるかもしれない。そういった視点で絵を描いて夢を見たいなと思っています」

 西野TDは、単なる戦力としての上積みだけでなく、酒井宏樹が、これからの浦和にとって必要な人材だったと力説した。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

【PHOTO】「Jリーグ歴代最強チーム」はどれだ!?|2006年浦和レッズの特選フォト!
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事