最高の抜け出しから極上のループ。上田の一連の動きはなかなかの神業だった【編集長コラム】

2021年06月12日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

その一撃で五輪メンバー入りを確定させたと言っても過言ではない

最高の抜け出しから最高のゴールを決めた上田。一連の動きは実にFWらしかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 U-24ガーナ代表戦に続き、ジャマイカ戦(結果は日本の4-0)でも際立ったのはディフェンスの安定感。オーバーエイジ3人(吉田、酒井、遠藤)の参戦で守備ブロックが文字通り"どっしり"と構えられるようになったからこそ、オフェンス陣も攻撃に専念できたのではないか。

 象徴的だったのが右サイド。久保が良い位置から何度も仕掛けることができたのはサイドバックである酒井の絶妙なサポートと気の利いた守備があったからだろう。久保の意識が必要以上にディフェンスへ傾かなかった点も踏まえて、酒井のパフォーマンスは高く評価されて然るべきだ。

 右サイドでの連係をはじめ、ジャマイカ戦では素晴らしいコンビネーションがいくつかあった。例えば遠藤のミドルでのゴールは、その直前にオーバーラップを仕掛けた旗手の動きがエクセレントだった。その攻め上がりに相手数人が意識を持っていかれた結果、遠藤はフリーで、しかも落ち着いてシュートを打てた。遠藤の技術はもちろん、旗手の動き出しが秀逸だった。
 
 動き出しと言えば、上田のそれも素晴らしかった。57分、三笘が相手をひとりかふたりは剥がすのを予測したうえで前線に飛び出す。そのタイミングもさることながら、三笘のパスを"トラップせず"決定機に結び付けたセンスが抜群だった。そして、GKを無力化したあのループ。最高の抜け出しから極上のゴールを決めた上田は、この一撃で五輪メンバー入りを確定させたと言っても過言ではない。

 それにしても、上田のパスの受け方には痺れた。あそこでちょっとでもボールに触れていればコースが変わって、攻撃のスピードも落ちていた。そうしたことも考えたうえで、ゴールへの道筋が見えていたからこそ、上田はあれだけスムーズな動きでゴールを奪えたのだろう。

 どこにボールを置けば次の展開がスムーズになるか、あえて触らず流したほうがいいか。攻撃の最中、そうした判断を瞬時に下し、実行に移すのは決して簡単ではない。その点で、シュート前のトラップも含め上田のゴールまでの一連の動きは大袈裟かもしれないが、なかなかの神業だった。少なくとも、あれをやられてはDFもGKもお手上げである。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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