W杯最終予選は本当に大丈夫? セルビア戦でも際立った大迫不在のダメージ【編集長コラム】

2021年06月11日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

低調だった前半。日本の攻撃が停滞した原因は…

野はノーゴール。不完全燃焼に終わったと言えるだろう。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 日本でのホームゲーム、しかも東欧のチームとの対戦で真っ先に思い出したのは、2016年6月7日に行なわれたボスニア・ヘルツェゴビナ戦。清武の先制弾でリードしながらもジュリッチに2ゴールを奪われて逆転負けした試合だ。相手の高さに対抗できず、カウンターを食らった局面でも1対1の弱さを露呈と、ある意味、日本らしいゲームだった。

 日本代表が今回の代表活動で戦うチームの中でもっとも手強そうなのがセルビアである。当時と同じように脆さをさらけ出すのか、それとも強さを示すのか、その点に注目した。ただ、立ち上がりの試合展開で気になったのはプレーの強度ではなく、日本のパスコースの甘さ。長友のクロス、中盤での橋本のパスなどはおそらくワールドカップのアジア2予選の戦いなら味方に通っていたが、セルビア戦ではいずれも止められている。

 2次予選の感覚で通っていたパスがセルビア戦の立ち上がりではつながらない。この感覚のズレはワールドカップ・アジア最終予選に向けて意外と深刻な問題に映る。厳しい戦いを経験してこそ研ぎ澄まされていく感覚が、2次予選というぬるま湯に浸かることで停滞してしまう恐れは否定できないだろう。

 もちろん、前半、日本の攻撃が停滞した原因はパス精度の他にもある。なによりの気掛かりは最前線でボールが収まらない点だった。そこでタメを作れないと、後方からのサポートが遅くなり、分厚いアタックを展開できない。サイドバックが攻め上がれないのもそのタメがないからであり、チームの重心も低くなりがち。実際、33分に伊東がシュートを打つまで日本にチャンスらしいチャンスはなかった。
 
 後半に入り、1トップがオナイウ(これがA代表デビュー戦)に代わってからはある程度スムーズな攻撃を仕掛けられた。鎌田のアイデアやキープ力、伊東の突破力は確かに目を見張ったが、だからといって日本が強さを示せたかという点では疑問が残る(結果は日本の1-0)。

 タジキスタン戦と同じくセルビア戦でも感じたのは、大迫不在のダメージ。もちろん大迫に代わるFWは見当たらないが、それでも彼がいない場合の最適解を用意しておくべきだ。

 苦しみながらも勝った点は評価できる。ただ、攻めあぐねた時間帯もかなりあったセルビア戦で強く感じたのは「これで最終予選は大丈夫?」ということ。オナイウの出来は決して悪くなかったとはいえ、この試合だけで「ポスト大迫はオナイウ」とはならないだろう。見逃せないのは、オナイウがノーゴールに終わった点である(惜しい場面はあったが)。点を取ってこそFWであり、その点でオナイウの出来には満足していない。

 最終予選の対戦国はおそらく、まず大迫を潰しにくるはず。その意味で日本は対策を立てられやすいチームと言えるかもしれない。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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