平等性を欠くU-24の五輪メンバー選考。ジャマイカ戦も強度が見込める試合にはなりそうもないが…【識者の視点】

2021年06月06日 サッカーダイジェストWeb編集部

なぜガーナのU-24代表を招待したのか? 五輪予選で敗れたチームを継続的に強化していく国はない

ガーナ戦はゴールラッシュで6-0の圧勝を飾った日本。守ってもわずかなシュートしか許さなかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 U-24代表には、27人の候補が招集された。オーバーエイジ(OA)の3人を除けば、24人が15席を競う構図だが、ガーナ戦は24人に決して平等のチャンスがあるわけではないことを如実に見せつけることになった。

 不可思議なのは、今回敢えてガーナのU-24代表を招待したことだ。東京五輪本番の南アフリカ戦を睨んでアフリカのチームと対戦しておきたいという意図は分かる。だがガーナはすでに五輪への出場権を失っている。これはガーナに限らず世界中の常識で、五輪予選で敗れたチームを継続的に強化していく国はない。現在欧州ではU-21選手権が行なわれており、たとえ大会で自国が勝ち進んでいても、そこで突出した選手たちは開幕が近いフル代表の大陸選手権のために抜けて行く。

 要するにU-23代表は、五輪出場権を得た国だけがU-21から継続させるものだ。そこにIOCの要望に沿ってOAが入ってくるわけで、サッカー界にとって五輪は極めてイレギュラーなものでしかない。もしこれから自国開催の五輪で金メダルを目指す日本のU-24代表が真剣にチームを強化したいなら、ガーナのフル代表を呼ぶべきだった。実際にOA3人を加えたU-24代表など、限りなくフル代表に近い。まして本番では真剣に頂点を目指すなら、わざわざ条件を揃えるハンデを相手に課す必要などまったくなかった。
 
 東京五輪への出場権を失ったガーナが、次に目指す年齢別ワールドカップはU-20である。つまり今回東京五輪代表候補選手たちが対戦したのは、2日前にA代表と戦ったチームより格下になる。もちろんU-24日本代表でプレーした個々の選手たちは、心理的なプレッシャーを抱えていたはずだ。吉田麻也のように「ダメなら今からでも替えてください」と直訴した選手もいる。OA組には、初めてのお披露目で自分たちの価値を認めてもらう必要があった。そして3人は、十二分に価値を証明した。

 遠藤航は水際立った読みでことごとく相手の攻撃の芽を摘み、バイタルエリアで攻撃を再構築する起点となった。フランスリーグで戦ってきた酒井宏樹の球際の躊躇ない競り合いも見事で、しかも右サイドでは久保建英、堂安律と絶妙の協奏を見せた。最後尾で支える吉田麻也も、再三精度の高い縦パスでスイッチを入れたが、その中でも攻撃陣の中であまり関われていない選手につけるなど最年長らしい気遣いも見えたように思う。

 彼らの牽引により、U-24日本代表は当然の結果を手にした。ガーナは75分近くまで、クロスもペナルティエリアへの侵入もシュートもなかった。その中で国内での充実ぶりから期待値の高い田中碧は、フル代表戦では別人のように落ち着きを欠いた。だが遠藤航が隣に立った瞬間から、すっかり本来の持ち味を取り戻している。
 

次ページ落選する選手には、この世界では不足の事態が次々に起こるという良い教訓になったかもしれない

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