【A代表×U-24代表戦|戦評】残念だった五輪組のアピール不足。浮かび上がったA代表との相違点

2021年06月04日 本田健介(サッカーダイジェスト)

日程や条件面での難しさはエクスキューズも

札幌で行なわれたA代表とU-24代表の一戦。A代表が3-0で勝利した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 平常時では絶対に実現しないA代表とU-24代表の"兄弟対決"。"兄貴分"のA代表が敗れる、もしくはドローに終われば、そこれこそ物議を醸し、東京五輪を直前に控える"弟分"U-24代表が敗れれば本大会が不安視される。

 大きな注目を浴びた一戦だが、どのような結果になったとしても周囲からのなにかしらの反応は避けられない。強化試合として、得られるものは小さくないはずだが、なんとも難しい試合になるだろうなというのが、戦前の印象であった。

 結果はA代表の3-0の勝利。先輩の威厳を示す形となった。逆にU-24代表は試合開始早々にセットプレーで失点すると、その後もなかなか自分たちの思うような形に持ち込めず。組織力に課題を残したと言えるだろう。

 もっともエクスキューズはある。この一戦は、A代表とジャマイカのゲームが直前に中止(新型コロナウイルスの検査の問題でジャマイカの一部選手が期日までに来日できず)になったことで、急遽、決まったもの。本来、U-24代表は6月5日に組まれたガーナ戦(A代表との一戦から中1日で臨む)に調整を進めていただけに、メンバー構成、日程など難しい面はあったはずだ。

 現に招集していた吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航の3人のオーバーエイジ候補は、遠藤のみを10分少々ピッチに送ったのみで、三笘薫らも起用せず。東京五輪で対戦する"南アフリカ対策"として組んだであろうガーナ戦に、より本番を意識したメンバーを投入すると見られる。

 A代表との試合ではいわば、当落線上の選手や、オプションを広げるための起用法がメインだった。確かにチームのベースがしっかりしていれば、誰が出ても力を発揮できるはずで、今後に向けて不測の事態に対応できる力も求められるが、難しい条件がいくつかあったのも事実である。
 ただし残念なのは、東京五輪のメンバーに是が非でも生き残るため、自らをアピールした選手が少なかった点だ。チームを機能させる意識が強かったのかもしれないが、もう少しガムシャラさを表現しても良かったのではないか。

 U-24代表にとって、ハードな日程を強いられたこの一戦をポジティブに考えれば、注目を浴びた試合だっただけに、当落線上の選手にとっては格好のアピールの場になったはず。それをどこか淡々とこなしてしまったようにも映ったのは、もったいないと感じる部分であった。もしこの試合で結果を残せば、"A代表に招集すべき"と周囲の声も味方につけられたのではないか。大きなチャンスであっただろう。

 逆に3月には韓国とモンゴルに連勝し、5月28日にはミャンマーを10-0で下していたA代表は、チームの指針が揃っていた印象で、序盤の強度の高いプレスで試合の流れを巧みに作った。絶対に負けられないというプライドが上手く作用し、"ガツガツ"さを表現したのはA代表で、攻め込まれた試合終盤もどこか余裕が感じられ、U-24との経験値の差も示した。

 条件の違いはあったにせよ、A代表の熱と、U-24代表の複雑な心境が入り混じった今回のゲーム。互いに学べる部分はあったはず。U-24代表にはオーバーエイジが本格的に絡むであろう、ガーナ戦以降の奮闘に期待したい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
 
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