【磐田】最前線と最後方に陣取る“スペシャル”プレーヤー

2015年05月18日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

FKで反応が遅れ、ボールはネットを揺らすはずだったが…。

最後方に立つ姿はまさに守護神。難しいことを簡単そうにこなすカミンスキーのポテンシャルは、まだ底が見えない。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 最前線と最後方に"スペシャル"な選手を配置できれば勝てる……とは言い過ぎだが、勝点を獲得する確率はグンと上がる。優勝候補、昇格候補と目される磐田と大宮の一戦では、それを改めて認識させられた。
 
 前者にはジェイとカミンスキー、後者には(途中出場した)ムルジャと加藤。特に磐田に所属するイングランド人とポーランド人は出色の出来で、1-1で勝点を分け合った試合を彩った。試合内容で言えば、名波監督の「勝ちゲームを落としたとか、勝点1を拾えたとか、そういう感じはあまりない。妥当な引き分けと言っていい」という言葉が、上位同士の熱戦であったことを物語っている。
 
 そのなかでジェイは空中戦でことごとく勝ち、アバウトなボールでも懐に収めた。抜群のスピードがあるわけでも、卓越したテクニックで勝負するわけでもない。単純に「強かった」(大宮・横山)のだ。駒野が蹴ったFKに高い打点で合わせてゴールネットを揺らした様は、まさにストライカー。難しいことを簡単そうにこなす姿に、"規格外"という言葉が浮かんだ。
 
 だが、そのジェイすらも霞む活躍を見せたのがカミンスキーだ。まずは37分、ゴール左上隅に飛んだ横谷のシュートに鋭く反応して魅せると、その後も安定したプレーを披露。81分には決定機を阻止する。
 
 ゴールほぼ正面、ペナルティアークやや外側にセットされたボールを名手・カルリーニョスがゴール左上隅を狙った。「蹴る瞬間にボールが見えていなかった」(カミンスキー)ため、反応が少し遅れ、明らかに失点シーンとなるタイミングだった。だが、191センチの巨体が横っ飛びすると、その左手によってボールは弾き出された。
 
「(ボールが)壁を抜けてから(自身の)右に向かっているのが見えた。そこまで強いシュートではなかったからね」
 
 事もなげに言うが、そんな簡単でないことはビッグセーブを目撃した全員が知っている。ゴール前に陣取るのが"スペシャル"な選手でなければ、スコアが動いて然るべき場面だった。
 
 さらに87分のPKの場面で、ムルジャの強烈なシュートを阻んだカミンスキー。「GKには運が必要」と謙遜したが、時間帯を考えてもチームの窮地を救った二度のプレーは、能力の高さを再認識するのに十分だった。
 
「PKだけでなく、その前のFKも含めてビッグセーブだと思う。ただ、彼にとってはイージーなプレーかもしれない。当たり前のように自身の仕事を全うしてくれているな、と」
 
 会見場でカミンスキーについて語った名波監督。稀代のレフティが真剣な表情で紡いだ「(24歳と)まだ若いが、底が知れない」という言葉は、スタジアムを沸かせたポーランド人GKについて言及しただけでなく、チームの伸びしろと可能性も示していた気がした。

取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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