悪夢の元凶へリベンジを果たすはずが最悪のかたちで返り討ちに……――サッスオーロ 3-2 ミラン

2015年05月17日 サッカーダイジェストWeb編集部

勝てるはずだった試合を落としたミランの苛立ちとやるせなさ。

本田は敵陣で効果的なプレーを見せていただけに、もし11人のままで試合が進んでいたら……という思いが消えない。もったいない一戦だった。 (C) Getty Images

 セリエA第36節、ミランは敵地でサッスオーロに2-3で敗れ、今シーズン4度目の連勝は成らなかった。
 
 前節のローマ戦で内容的にも手ごたえを感じられる勝利を挙げたミラン。この試合にも気分良く臨み、実際に後半の途中までは十分に勝利の可能性があった。
 
 個々の選手の動き出しが速いため、守備では相手陣内でボールを失った段階から複数の選手が囲い込んで奪い返す、もしくは絞り込んで相手の効果的なプレーを封じることができていた。
 
 攻撃では、右サイドを中心に比較的容易に相手ペナルティエリア手前まで持ち込めたし、多くの選手が素早く動いてパスを回し、フィニッシュまで持ち込むという、今シーズンはめったに見られないプレーもいくつか披露された。
 
 それでも、30分までに2点をリードされたのは、まず中盤と最終ラインの間にスペースを空けることが多く、ここを利用されたこと。MF陣が頻繁に上がることで敵陣でのプレーを効果的なものとした反面、ここで相手の攻撃を止める、もしくは遅らせられないと、即危ない場面に繋がった。
 
 そして、サッスオーロ自慢の3トップの存在。なかでも昨シーズンのミラン戦で4ゴールを挙げたドメニコ・ベラルディは、この試合でも抜群の動き出し、ボールコントロール、そして決定力を披露。また、シモーネ・ザザは得点こそなかったものの、前線で圧倒的な存在を示し、ミランDF陣のマークや注意を分散させた。
 
 結局、ミランはこのふたりを最後まで抑えることができず、これが直接的な敗因となったのである。
 
 とはいえ、ミランは簡単に落ち込むことはなかった。2失点目から2分後、ジャコモ・ボナベントゥーラが相手の密集するペナルティエリア内をドリブルで突き進みながら、サイドネットにボールを流し込む見事なゴールで1点を返す。
 
 さらに後半開始から5分、シュートコーナーからアレックスがタイミングの良いジャンプでスソのクロスを頭で合わせ、試合を振り出しに戻した。
 
 前述の通り、サッスオーロの前線にボールが渡るといいように翻弄されたものの、多くの時間帯でミランDF陣は中盤のスペースを消した上で、相手のパスの出どころを抑えるか、相手3トップにパスが渡る瞬間を狙ってチャージを仕掛けることで対応し、後半は危険な場面はほとんどなかった。
 
 攻守で良い状態にあり、ミランの勝ち越せると、選手もフィリッポ・インザーギ監督も考えていただろう。ところが、その矢先の54分にボナベントゥーラがハンドで2度目の警告を受けて退場。本田圭佑とともに攻撃を構成していた彼を失い、さらに10人となったことで、攻撃力はパワーもトーンも大幅にダウンしてしまった。
 
 攻撃は少ない人数でのカウンターに頼らざるをえなくなったが、守備ではそれまで同様のかたちが機能してはいた。しかし、やはりザザ、ベラルディのどちらかにボールが収まってしまうと、一気にピンチを迎えた。
 
 70分にザザのリターンパスを受けたベラルディが完全にフリーでシュート。これはGKディエゴ・ロペスが驚異的な反応で防いだものの、その7分後に左サイドから入ったグラウンダーのクロスをザザが中央に流したところにベラルディが走り込んだプレーには、ミランの守護神も対応しきれず、勝ち越しを許してしまった。
 
 この直後に本田はステファン・エル・シャーラウィとの交代を命じられる。左右中央でボールを運び、パスを出して、ゴールの可能性も幾度か感じさせ、ボナベントゥーラ退場後もボールの収まりどころとして機能していた彼がいなくなり、ミランの攻撃は残り時間でほとんど機能せずに終わった。
 
 交代時、本田は珍しく悔しそうな表情を見せたが、その感情はミランの全ての選手にあっただろう。
 
 前回の対戦同様、勝てるはずの試合だったにもかかわらず、最も警戒すべき選手を抑えきれずに3度もゴールを割られ、また不必要なボナベントゥーラの退場などで自らの首を絞めた。1失点目のゴール判定(ゴールラインを割ったか微妙)など審判へのたび重なる不満も、彼らの苛立ちとやるせなさを増長させたに違いない。
 
 サッスオーロといえば、前述のベラルディ4得点の因縁だけでなく、今年最初のセリエAで対戦し、序盤に先制するも、自らのミスで調子を崩して逆転を許し、これがその後の歴史的な大低迷のきっかけとなったという経緯がある。
 
 長い悪夢をもたらした相手に、敵地でリベンジを果たすはずが、最悪の形で返り討ちに遭ったミラン。わずかに可能性のあった欧州カップ戦出場についても、引導を渡されることとなった。不満、後悔、ストレス、消化不良……光明が見えていたミランだけに、終わってみれば、ネガティブな感情ばかりが湧き出す一戦となった。
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