3トップだけではない――バルサをCL決勝に導いた3つの要素【バルサ番記者】

2015年05月15日 ルイス・フェルナンド・ロホ

医療体制が機能したことで驚くほど怪我が少なかったシーズン。

驚異のトリデンテ、それを活かした周囲の選手、その選手たちのコンディションを最高の状態に導いたクラブの医療体制。全てにおいて万全のバルサが、敵将の判断をも狂わせた? (C) Getty Images

 バルセロナがバイエルンを2試合合計5-3で退け、チャンピオンズ・リーグ(CL)決勝進出を果たした。
 
 シーズン開始時には優勝候補筆頭だったバイエルンをバルサが退けた最大の理由は、いわずもがなメッシ、スアレス、ネイマールの3人にある。
 
 第1レグの後半途中まで、先制点を奪うのはバルサよりもバイエルンの方だろうと思われていたくらいだったが、そんな苦境を変えたのがメッシだった。この1点で、全てが変わったと言ってもいいだろう。
 
 そして第2レグでキーマンとなったのは、スアレスとネイマール。彼らが生んだ2得点が、奇跡の逆転突破を夢見たミュンヘンのファンの夢を砕くことになった。
 
 2試合で5点を生んだ「トリデンテ(3トップ)」こそが、決勝を呼び込んだといっていい。
 
 しかし、それ以外にも勝因は隠されている。そのひとつが、医療チームによるコンディショニング・マネージメントだ。
 
 バルサは最先端のメソッドを用い、選手の筋力やフィジカルコンディションの検査を頻繁に行なっている。ここでの数値が低い選手を、ルイス・エンリケ監督は、どれだけ重要な選手であろうと休ませてきた。その代表例が、ラキティッチ、イニエスタ、ブスケッツといった選手だ。
 
 筋肉に疲労が見られる選手を休ませる方針を貫いた結果、今シーズンのバルサは驚くほど怪我が少なく、イニエスタ、ラフィーニャ、ダニエウ・アウベス、マテューが軽度の負傷を負ったくらいだった。ブスケッツは3週間離脱したが、これは相手選手のタックルによるものである。
 
 4~5月にピークが来るように調整されたコンディショニングも功を奏したと言える。バイエルン戦を前に、バルサに負傷者はなく、瞬発力や持続力などの各数値も高かったからだ。バイエルンがロッベン、リベリ、アラバ、バドシュトゥーバーを負傷で欠いていたのとは対照的でもある。
 
 バイエルンは先日、長年従事してきたドクターが辞任したが、これらのゴタゴタがCL準決勝の結果に影響を及ぼさなかったとは言い切れない。特に、ロッベンとリベリの負傷は、決定的な要因だったと言える。
 
 3つ目の理由は、第2レグでバイエルンのグアルディオラ監督が慎重な試合運びを選んだことだ。
 
 長い歴史において、バイエルンはホームでバルサに一度も負けたことがない。大歓声に後押しを受けての勢いのあるサッカーを、これまでの多くの指揮官は利用してきたものだが、グアルディオラはそれよりも常に失点を警戒していた。1-0でリードした時ですら、その姿勢を変えなかった。
 
 やはり、心のどこかにトリデンテのカウンターの脅威が染み付いていたからだろう。とはいえ、元々、決勝進出の可能性は低かったのだから、最初からスタジアム内に満ちた勢いを利用し、全力でぶつかる方針を貫いた方が良かったのではないだろうか。ミュンヘンのスタンドから、バランスを考えすぎる彼のチームを見ながらそう思った。
 
文:ルイス・フェルナンド・ロホ
翻訳:豊福晋
 
Luis Fernando ROJO|MARCA
ルイス・フェルナンド・ロホ/マルカ
スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙『マルカ』でバルセロナ番を20年以上務め、現在は同紙のバルセロナ支局長。ヨハン・クライフら往年の選手とも親交が深く、ジョゼ・モウリーニョとはボビー・ロブソン監督の通訳時代から親密な関係を築く。
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