“芯”はあるのか。不安定な柏が抱える最大の問題点とは

2021年05月16日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

チームの骨格を成す肝、つまりストロングポイントがハッキリしない

FC東京に大敗し、肩を落とす柏の選手たち。リーグ3連敗と低調な戦いが続いている。写真:滝川敏之

 3連勝のあとに3連敗。11節の徳島戦後に「序盤戦の低迷からの"完全復活"を印象付けるゲーム」と書いたことを強く後悔させられる不安定ぶりだ。ホームでFC東京に0-4と大敗した柏は正直、目を覆いたくなる出来だった。後半開始の反撃は慰めにならない。

 今の柏には"芯"が見当たらない。チームの骨格を成す肝、つまりストロングポイントがハッキリしないのだ。スローガンに「VITÓRIA」(ポルトガル語で勝利を意味する)を掲げようにも、武器がなければ勝ち目がない。

 というのも、強みが分かりづらいのは必然でもある。ネルシーニョ監督は対戦相手を分析し、頻繁にシステムや戦術を変える指揮官なので、いわゆる「自分たちのサッカー」を作ってこなかった。ただし緻密な分析で、采配が当たる試合もあったから、そのチーム作りを今までは否定的に見ていない。視点を変えれば「臨機応変」が武器でもあった。

 しかし今季は結果がついてこない。これをネルシーニョ監督の采配ミスがすべてと見るのは微妙なところか。もちろん指揮官の手腕が低迷の一端ではあるかもしれないが、「練習で『相手がこうくるから、こうしよう』があるなかで、練習でやってきたことが出せていないのは結構問題」(三丸拡)という原因もある。だからこそFC東京戦で、試合の対策を準備してきたネルシーニョ監督の目には「選手たちの頭が真っ白になってしまったんじゃないかという印象すら覚えるゲームの入り」と映ったのではないか。

 選手と監督のどちらに不振の責任があるかはさておき、指揮官が思い描くゲームプランと、実際に選手たちが見せられるパフォーマンスにズレが生じているのだろう。すり合わせる必要があるのは間違いない。

 そこでキーマンになりそうなのはベテランか。これまでもネルシーニョ体制では、例えば19年なら染谷悠太や三原雅俊、20年なら山下達也や大谷秀和などが好調時に貢献度が高かった。指揮官のゲームプランを忠実に体現するだけでなく、味方にも声を掛けてチームを一枚岩にさせる中心となっていたのだ。

 だが、怪我など様々な事情が重なりベテランがフル稼働できていない今季は、どこかチームが一丸になれていない印象がある。特にコロナ禍で選手たちの声が聞こえやすい現在、対戦相手と比べるといつも柏はコミュニケーションが少ないように感じる。

次ページ軸を定めない限り、安定は望めない

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