「監督とは教育者になること」シメオネやポチェティーノらアルゼンチンからなぜ名将が生まれるのか?その“源流”を辿る【前編/現地発】

2021年05月03日 チヅル・デ・ガルシア

「監督輩出国」を裏付ける実績

ガジャルド(左)、シメオネ(中央)、ポチェティーノ(右)と世界でトップクラスの評価を受けるアルゼンチン人監督たちはいかにして“育成”されてきたのか。(C)Getty Images

 サッカーが文化として人々の生活に溶け込んでいるアルゼンチンでは、選手だけでなく、指導者も次々と生み出される。

 現在、欧州の主要トップリーグで指揮を執るアルゼンチン人はマルセロ・ビエルサ、ディエゴ・シメオネ、マウリシオ・ポチェティーノの3人だけだが、世界全体を見れば、文字通りの「輩出国」であることは一目瞭然だ。

 昨年6月にスイスのサッカー関連調査機関『CIES Football Observatory』が発表した統計によると、世界79か国110のリーグに所属する1646クラブのうち、アルゼンチン人が監督を務めるクラブが「68」と最多だった。ちなみに2位がスペイン(41クラブ)、3位がセルビア(34クラブ)となっている(2020年6月1日時点)。

 68のうち43は南米のクラブで、欧州クラブは決して多くはないものの、エレニオ・エレーラ、アレハンドロ・スコペッリ、アルフレド・ディ・ステファノといった先代たちが欧州で残してきた功績こそ、今日もアルゼンチン人監督が求められる要因のひとつと考えられている。

 数の多さが実績に裏付けされていると証明できる要素はいくつかある。
 
 2018年のロシア・ワールドカップに出場した32か国のうち5か国(アルゼンチン、コロンビア、ペルー、エジプト、サウジアラビア)がアルゼンチン人の監督を擁し、さらに2019年度の「The Best FIFA Football Awards」では、男子年間最優秀監督賞候補10人のうち、アルゼンチンからはポチェティーノ、マルセロ・ガジャルド、リカルド・ガレカがノミネートされた。

 また、南米では昨シーズン、全10か国のリーグ戦で6か国(アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ボリビア、コロンビア、エクアドル)においてアルゼンチン人監督が率いるチームが優勝を遂げたほか、今年度のコパ・リベルタドーレスに参戦する32チームのうち最多となる13チームで指揮を執っている。

 さらに、前述のCIESの調査では、対象外となる国で監督業に励むアルゼンチン人も存在する。ルワンダの1部リーグに属するムクラ・ヴィクトリー・スポーツを指揮するロドルフォ・サパタはその代表的な例だ。彼はアメリカで10年間にわたって育成指導者としてのキャリアを積んだ後、2010年からアフリカ各地のクラブで指導を続ける変り種だ。

 世界で活躍する多くのアルゼンチン人監督が評価されているのは、数字や実例によってはっきりと証明されているのである。

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