「テクニカルエリアの絵面」と「ベンチ入りの7人目」。大切にしてほしい“徳島らしさ”

2021年04月18日 柏原敏

「今は良い意味で適応していかなければいけない段階」(岩尾憲)

「選手たちと練習できて嬉しい気持ちでいっぱい」と喜びを語ったポヤトス監督。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ10節]徳島0-1鹿島/4月17日(土)/鳴門大塚

 ダニエル・ポヤトス監督が鹿島アントラーズ戦2日前に合流。11連戦5戦目、かつアウェー連戦を終えて中2日で迎える鹿島戦。体力的には厳しい条件ながら、待望の指揮官到着に笑顔が溢れて練習場は活気づいた。

「本当に喜びに満ち溢れています。バルセロナからなかなか来ることができず、チームを助けられないと感じていました。しかし、徳島に来ることができ、選手たちと練習できて嬉しい気持ちでいっぱいです」(ポヤトス監督)

 その光景にはポジティブな要素しかない。

 とはいえ、刺激を与えれば反応が起きる。その『変化』を全員で共有し、互いが距離を縮め合いながら微調整していく作業は当面必要になる。

「今は良い意味で適応していかなければいけない段階。いきなり組織が見違えるほど成長して優勝争いするような夢物語はこの世には存在しない。いまは、その変化に対し、自分たちがエネルギーやパワーを持って試合に入り、迷いなくプレーすることへの方向付けをやっている段階です」(岩尾憲)
 
 ポコ・ア・ポコ( poco a Poco )。少しずつ、一歩ずつ。

 その中で、鹿島戦を終えて記者目線で今後注目したい項目が2つあった。

 1つ目が、テクニカルエリアの絵面。

 ポヤトス監督、選手のことを熟知する甲本ヘッドコーチ、岡井通訳の三角形でコミュニケーションを取る絵面がもっともっと欲しい。定義こそないが、そのほうが徳島らしい。指揮官が来日できない穴を埋めるため、スタッフ陣はオンラインで膨大な時間を共有してバルセロナと日本の距離を縮める素晴らしいコミュニケーションを取り続けてきた。その絵面を、オフラインでも数多く見たい。

 2つ目が、ベンチ入りの7人目。

 リーグ戦試合実施要項の第13条に「チームスタッフについては7名を1チームあたりのエントリー可能数の上限とする」とある。

 スタッフが増加した鹿島戦は、中河昌彦GKコーチがベンチ外で戦況を見守った。セットプレーの守備時に響き渡る甲高い声。その声の主が愛称「ぴーさん」こと中河GKコーチだ。個人的見解だが、ぴーさんはピッチ脇にいたほうが徳島らしくて良い。スタジアムに響く『声量と声質』が試合の局面で大切という事実もあるが、主たる理由は人柄だ。

『HUB(ハブ)』として組織のつなぎ役も担っている。元気!明るい!誰にでも遠慮なく絡む!「誰にでも遠慮なく絡む」は怒られそうだな……(笑)。そして、特筆すべきはツイッター。勝利後には必ず試合後のロッカールームの様子を投稿してくれる。その写真の確認も含めて勝利のルーティンというファン・サポーターも多いはず。スタッフ同士をつなぐハブであり、スタッフと選手、チームとファン・サポーターを繋ぐハブでもある。そういた背景も含め、7人目のベンチ入りスタッフの行方にも注目している。

 いずれにせよ何も心配はしていないのだが、変化への対応力が求められるなかでも『徳島らしい』という基準は変わらず大切にしてもらいたい。

文●柏原 敏(フリーライター)
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事