【FC東京】苦しい時こそ輝く「勝利の方程式」

2015年05月03日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

後半に入りチームの重心が“前に”修正され、反撃に転じる。

後半に入ると「自分たちが仕掛ける守備」が奏功。司令塔の中村(右)を封じ込めたFC東京は徐々に流れを引き寄せた。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 前半は、明らかに川崎のペースで進んでいた。
 
 中村と大島の両センターハーフが起点となる川崎の攻撃を抑えられなかったFC東京は、まったくと言っていいほどサッカーをさせてもらえないまま21分に被弾。中村のFKにヘッドで合わせた大久保にJ1通算140ゴール目(三浦知良を抜いて歴代単独4位)を決められ、ホームのピッチで"カズダンス"まで披露されてしまった。

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 FC東京が押し込まれた要因のひとつは、4バックの最終ライン(右から徳永、吉本、森重、太田)が引き気味に構え、敵2トップのケアをアンカーの梶山が担うような形で戦っていた点にある。
 
 梶山が大久保と船山に引っ張られてできたスペースを、羽生と米本の両インサイドハーフが下がってカバーした結果、チームの重心が後ろになり過ぎて、川崎のパスの供給源でもある中村と大島に自由を与えてしまったのだ。
 
 水際でどうにかピンチを防いでも、ボールを奪う位置が低過ぎてカウンターに結びつけられない。トップ下の河野がセンターサークル付近からドリブルで仕掛けても、大島にがっちりと阻止されてしまう。
 
 さらに、良いパスを引き出せない武藤と林の2トップも前半はほとんど消えており、反撃の糸口を掴めなかった。
 
 しかし、CBの吉本に焦りはなかったという。
 
「前半を1点差で折り返せば、ハーフタイムに監督が修正してくれると思いました。だからチームとして上手くいっていなかったですが、割り切って守っていました」
 
 すると後半、川崎のパスワークに蹂躙されていたFC東京が逆襲に転じる。ポイントはアグレッシブな守備だった。吉本は少しリスキーな戦い方が上手くいったと言う。
 
「相手の2トップにCBがついて、インサイドハーフふたり(羽生と米本)とアンカーの梶山選手で中村選手と大島選手を抑える。(全体的にラインを上げると)裏のスペースを取られる可能性は高くなりますが、とりあえず前からプレスすることで相手を封じようと思いました」
 
 後ろになり過ぎていたチームの重心が"前に"修正されたのが、結果的に良かった。実際、後半の頭から入った東も「こっちから仕掛けるディフェンスが機能して流れを引き寄せられた」とコメントしている。
 
 その東と同じく途中出場した前田も、懸命にチェイシングするなど守備に貢献。後半から起用されたふたりの献身は川崎のパスワークを抑えるうえで、見逃せないファクターだった。

次ページ武藤が倒され、太田が蹴る。今やセットプレーこそが生命線に――。

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