【岩本輝雄】どうりで強いわけだ。フロンターレの布陣は4-“4”-3。日本のモドリッチがいるからね

2021年04月09日 岩本輝雄

海外移籍も時間の問題だろうね

ますます“凄み”を増している田中碧。言うなれば、日本のモドリッチだ。(C)SOCCER DIGEST

 去年の途中ぐらいからかな、一気にグンと成長した感があるよね。今季も期待どおりの活躍ぶり。フロンターレの田中碧はますます"凄み"を増している。

 上手いけど、ちょっと線が細いかな。最初はそんな印象だった。でも、今ではその力強さ、フィジカル的な逞しさも強みのひとつになっていると思う。

 フロンターレはボールを失った瞬間、素早く攻守を切り替えて奪い返しに行くけど、田中碧の素晴らしいところは"奪い切れる"こと。寄せて遅らせるとか、寄せて味方が奪うとか、じゃない。自分で完結できる。世界基準では当たり前の「個の力」を体現している。

 どこがピンチの芽になりそうか、どのタイミングで相手を追い込むか。危機察知能力が高くて、判断も的確。相手に詰めよる一瞬のスピードがあるし、それを何度も繰り返す馬力もある。全方位にアンテナを張って、ボール奪取を狙っている。

 だから、アンカーのシミッチも楽だと思うよ。フロンターレの基本システムは4-3-3。でも、シャドーの田中碧が幅広く動き回るから、大げさに言えば、中盤のトライアングルが、ときにスクエアになる。田中碧が一人二役を演じて、フロンターレは4-"4"-3。どうりで強いわけだよ(笑)。

 もちろん、攻撃面でも非凡な能力を発揮。相手のギャップにすっと入ってパスを引き出し、テンポ良く捌く。特筆すべきはイージーなミスが極めて少ないこと。変に流れを切らさない。ラストパスも出せるし、チャンスと見るやゴール前に果敢に入っていく。セットプレーでは質の高いボールを蹴る。相手からすれば脅威だし、やっかいな選手だと思う。

 一つひとつのプレーが自信に満ち溢れていて、攻守の両局面でエネルギッシュに振る舞う。1-0で勝ったこの前の鳥栖戦で、田中碧のスプリント回数は両チーム通じて最多の30回。ピッチ上の存在感は抜群だった。

 厳密に言えばプレースタイルは違うけど、海外の選手でたとえるなら、モドリッチみたいだよね。派手さはないかもしれない。でも、圧倒的な技術力と運動量を武器に、チームを助けるプレーができて、自らも決定的な仕事をこなす。これほど頼りになる選手はいないと思う。あとは、アウトサイドのキックでゴールやアシストを量産すれば、理想的だね(笑)。
 
 五輪代表はもちろん、A代表でも主力になる日はそう遠くないと思う。その実力を考えれば、海外移籍も時間の問題だろうね。海外でどこまでできるかも早く見てみたいし。

 そう考えると、Jリーグで田中碧のプレーを見られる機会はそんなに多くないかもしれない。今のうちに、しっかりと目に焼き付けておいたほうがいいかもね。

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