三笘は敵の罠にハマった印象。日本になくてアルゼンチンにあったものは…【編集長コラム】

2021年03月26日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

アルゼンチンの組織立った守備は素晴らしかった

三笘はアルゼンチン戦で持ち味を発揮したとは言い難かった。次戦に期待。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 個人的な感想を述べれば、3月25日の日韓戦よりも試合前の期待感はこちらのゲームのほうが上だった。U-24日本代表で久保と三笘が"夢の共演"、しかも相手は南米の強豪アルゼンチンなのだ。そんなフレンドリーマッチを楽しみにしていた方はかなり多かったはずである。

 その日本対アルゼンチン戦(3月26日)でなにより注目していたのは、今季の川崎でも無双状態にある三笘が代表戦でも輝けるか、だった。しかし、結果はノーゴール。得意のドリブルも相手に引っ掛かる場面が多く、そこまで見せ場を作れないまま65分過ぎに途中交代と消化不良だった感が強い。

 三笘はアルゼンチンの罠にはまった印象だ。敵陣のサイドライン、ペナルティエリアから近くない位置でボールを持たされ、実際、そこから仕掛けても体力を削られるだけだった。

 三笘以上にチャンスを演出しそうな回数が多かった久保も、大きな違いを見せつけていたかと言えばそうではないだろう。むしろ、アルゼンチンの粘り強いマークに手を焼いたように映った。
 
 この日の主役は日本ではなくアルゼンチンだった。なにより素晴らしかったのは彼らの組織立った守備だ。後半に崩れそうなシーンはあったものの、結果的に完封(1-0)。サイドにボールをふられても動じず、MFとDFの2ラインで冷静にパスコースを限定し、中央突破は許さないというスタンスのディフェンス網は頑丈で、美しささえ感じ取れた。

 切り替えも早く、奪ったボールを前線につなぐ技術も相当なレベルだった。後半途中から攻撃面で少しキレをなくしたが、それでも個々の技術は途中出場の選手も含めて目を見張るものがあった。

 日本になくてアルゼンチンにあったもの──。それは強さと怖さだったのではないか。少なくとも、この日の日本の攻撃に怖さは感じられなかった。ボールを繋いでいたというより、持たされた格好で良い形で最前線の田川にパスが入らなかった。

 一方でアルゼンチンは球際の競り合いに強く、縦への速い攻撃で瞬時にプレッシャーをかけて怖さも出してきた。決勝点の場面では、ここぞという局面でパワーを発揮してしっかりと決め切る"したたかさ"も見せた。

 スコアは1点差だが、完敗に近い内容。攻撃も守備も軽く映った日本の重厚感のなさが目に付いた一戦だった。

別の言い方をすれば、上手さだけでは勝てない、それを象徴するようなゲームだった。期待していたぶん失望も大きいが、アルゼンチンと再戦する次の試合では是非意地を見せてもらいたい。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

【PHOTO】チャンスを作るものの先制点を許し0-1、逆転を目指して後半へと折り返す!
 
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