「なんとも思わない」「善戦した」両極端な捉え方となったスコアレスドローの九州ダービー

2021年03月22日 荒木英喜

攻め込んだ鳥栖、粘り強く守った福岡

5年ぶりの九州ダービーはスコアレスドロー。両者のプライドをかけた熱戦では得点こそ生まれなかったが、局面の激しいバトルなど見応えはあった。(C)J.LEAGUE

[J1リーグ6節]鳥栖0-0福岡/3月21日(日)/駅前不動産スタジアム

「すべてにおいて力のなかった90分だったと思います」

 5年ぶりとなった宿敵・アビスパ福岡との九州ダービーを終えて、サガン鳥栖の金明輝監督は悔しさをにじませた表情でそう切り出した。

 70パーセント近いボール保持率で 相手の4倍以上となる9本のシュートを放ちながら、結果的にはスコアレスドローに終わった。この引き分けにより開幕戦からの連続無失点試合数を6に伸ばし、1996年に横浜フリューゲルスがマークしたJリーグ記録に並んだ。だがこれは今の鳥栖にとってなんの慰めにもならない。

 当然ながら、金監督も選手たちも記録のことなど頭になく、純粋に勝利を望んでいたからだ。仮にこの試合で失点しても、最終的に福岡よりも1点多く取って勝ったほうが、記録達成よりも満足度は高かった。

 記録達成を問われた金監督は「どの試合も勝点3を目指しています。なので、悔しいです。6試合無失点にはまったく興味がない。勝ちたいです」と厳しい口調で答えた。GK朴一圭も「正直、なんとも思わないですね。この試合が始まる前には『記録を塗り替えたい』と話しましたが、それはゲームに勝ちながら。引き分けが続いて記録を更新しても嬉しくない」と話した。

 一方、福岡の長谷部茂利監督は「試合前には3位で、上手だし、強いという鳥栖さんに対して、善戦したかなと思います」と、現在の力関係を踏まえて一定の評価をチームに与えた。4-4-2のフォーメーションで試合に入り、10分頃までは良い試合運びをしたが、その後は防戦一方となり、後半は前寛之をアンカーに置いた4-1-4-1に変え、ボールを奪ってからカウンターに持ち込むシーンも作った。
 
 ゴールは奪えなかったが、ゴール同様に無失点も昨季から目指しているため、FW山岸祐也は「自分たちは守備をする時間が長くて、失点しないというところをみんなで言っていたので、それを達成できたのは良かったです」と無失点に満足感を見せた。

 4勝1分で今季のJ1リーグに旋風を巻き起こしている鳥栖と、今季からJ1に復帰して2連勝でこの試合に臨んだ福岡との一戦。それぞれのスタイルを前面に押し出して戦った結果はスコアレスドローだったが、お互いの捉え方はまったく異なるものとなった。

 それは、本気でACL出場を目指している鳥栖と、J1残留を最初にクリアしなければならない福岡という、現在置かれている立場の違いが影響しているからだ。

取材・文●荒木英喜

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