【山形】得失点差「-5」が物語る残酷な現実

2015年04月26日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

“ドローマスター”への道こそ生き残る術か。

頼みのディエゴもノーゴールでは、守備を固めて粘り強く勝点を拾うしか術がない。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 善戦しながらも、ホームでFC東京に0-1と惜敗。「苦しい試合でした」と相手FWの武藤がコメントしたように、山形は"それなり"に戦えていた。なかでも評価すべきは守備力。FC東京戦でも守護神の山岸、CBの西河を軸に幾度もピンチを防ぎ、終わってみれば与えた決定機はわずかにふたつだった。
 
 J1の7試合を消化しての総失点7は、6番目に優秀な成績(4月25日現在)。プレーオフ昇格組としては胸を張れる数字と言えるだろう。だが一方で、総得点2は最下位の甲府と並び18チーム中ワーストタイ。要するに、低迷の原因は得点力不足で、そこさえ改善できれば浮上のきっかけを掴めるはずだが、問題の根は想像以上に深い。
 
 前の主力3人──1トップのディエゴ、2シャドーの川西と山﨑がいずれもノーゴール。「うちには武藤のような飛び抜けた選手がいるわけではない。最後のクロスやシュート、パスを突き詰めていかないと」とFC東京戦後に石﨑監督が険しい表情で話したように、現状では個の力でなかなか局面を打開できない。そんな山形がJ1の舞台で得点力を高めるには、攻撃に人数を割く以外にないのではないか。しかしそれを実践すれば、おそらく頼みの綱であるディフェンスが脆くなる。
 
 山形のサッカーは、言わば攻守一体。前線から根気よくプレスを掛けているからこそ、ここまで大崩れしていないわけで、ハイプレスに惜しみなくスタミナを使う「全員守備」の成果が総失点7と捉えてもいい。
 
 守備ありきのスタンスを崩して、攻撃に比重を置けばゴールの確率が高まる半面、失点の可能性も間違いなく高くなる。格上相手に善戦できているとはいえ、コンスタントに勝点3を獲れない──。「-5」という得失点差が、山形の苦しい現状を物語っていると言えるだろう。
 
 資金的な余裕がなく夏の大型補強も現実味に乏しいなか、山形がJ1残留を目指すには昨季の甲府の戦いぶりを手本にすべきだ。つまり、闇雲に白星を狙わず、最低でも引き分けに持ち込むスタンスだ(山形の場合はスコアレスドローを狙うのがベターか)。
 
 そうやって粘り強く勝点を積み上げていけば、いずれチームは負け癖を払拭し、しいては勝点3を拾える試合が増えるかもしれない。守備の組織はある程度確立されているのだから、そこを頼りに"ドローマスター"への道を切り開いてもらいたい。
 
 引き分けを良しとしない向きもあるだろうが、負けるよりはマシだ。いずれにしても、現状の守備力を維持したまま得点力を高めるという理想論に捉われ過ぎるのは危険。白星を増やすより、黒星を減らす工夫が求められる。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事