ゼロで抑えるための妥協なき守備戦術。「最後のところではっきりと」昇格組・相模原の勝機の掴み方

2021年03月13日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「まだ新しいチーム。コミュニケーションを積み上げていかないと」

今季新加入でキャプテンを務める鎌田。J1での実績も豊富なリベロを軸に堅守を築く。写真:徳原隆元

 当たり前のことを、当たり前にこなす――それができれば「強い」と、SC相模原の薩川了洋ヘッドコーチは言う。

 攻撃陣と守備陣が分かれた練習で、守備陣を見ていたのが薩川コーチだ。試合時の守備ブロックにかかる人数からひとり減らし、あえてズレが生じるようにして、守り方をトレーニングする。

「ワイドを崩されるとか、スペースをわざと開けるために。声の掛け合いだけでマークはできるし、プレッシャーもかけられる。そこの意識づけ。まだ新しいチーム。そういうコミュニケーションを積み上げていかないと」

 相模原にとって今季はJ2初参戦のシーズン。どうしても守勢に回る時間帯が長くなる。

「上がったばかりのチームで、やっぱり攻められることが多い。(三浦文丈)監督が言っているように、粘り強く、耐えながら勝機を引き寄せなければならない」

 そのためにも守備が簡単に崩れてはならない。ディテールにこだわって指導する。

「後ろに引いていても守れない。人が揃っているのに点を取られるのは、マークにつけていないから。誰かが『つけ!』と言う。逆に、自分から『つく!』と言う。それだけで失点はだいぶ減ると思う」

 試合中の"休み方"にもコツがいる。

「ただボーっとして休んでいるのと、次を準備して休んでいるのでは違う。休んでいる時も、予測してポジションを取っているかどうか。ボールがあそこに動いたな、じゃあ少しジョグしてそこにいこう、とか。そういう感じ」

 90分間で誰かがサボったり、集中力が切れたりすると、その隙を突かれて失点する。そうならないように細かい部分にも薩川コーチは目を光らせるが、「うちの選手たちは切り替えが早く、ゴール前に戻ってくる選手たちも真面目にやってくれている」とも語る。
 
 だからこそ、より強度の高く、決して手を緩めないディフェンスを求める。

「最後のところではっきりと、自分がつくのか、誰かにつかせるのか、その作業をもう少し緻密というか、しっかりやってほしい。それだけでも耐えられる。ゼロの時間を長く。そのなかで勝機を」

 前節のザスパクサツ群馬戦は0-0のスコアレスドロー。シュート数で圧倒されたゲームだったが、ゼロで守り切って勝点1を掴んだ。次節はアウェーのファジアーノ岡山戦。「長くJ2にいて、パワーがあるチーム。剥がされることも多いかもしれない」と薩川コーチも警戒を強める。厳しい戦いになりそうだが、一切の妥協を許さない堅守を築き、相手の攻撃をしのいで勝利を手繰り寄せたい。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストweb編集部)

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