【徳島】低迷打破への鍵を握る新背番号「10」大﨑淳矢。ジュンヤスマイルの舞台裏と秘めたる覚悟

2015年04月23日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

野武士のようなモジャモジャキャラの橋内でさえ惚れ込んだ笑顔の裏側にあった葛藤。

今季から背番号を20から10に変更した大﨑。徳島が浮上するためには、彼の活躍が不可欠だ。(C)上野照文(フォトアルテ・グッツィ)

 2013年の四国勢初のJ1昇格決定、そして2014年のJ1初挑戦……サッカーダイジェストの誌面で徳島ヴォルティスの特集を組んだ際、必ず大﨑淳矢がインタビューや対談で誌面に登場してきた。野武士のような男臭さを放つモジャモジャキャラのDF橋内でさえ、「男だけど惚れ込んでしまいますよ」と真顔で絶賛する、「ジュンヤスマイル」が、歓喜や希望の船出に花を添えてきたのだ。
 
 天性のものと言っていいのだろうか、周りをパッと一瞬にして明るく照らしてしまう魅力的な笑顔。それはクラブが紆余曲折を経ながらも(時に唇を噛み締めつつ、基本的には明るく前向きに)確実に前進していった時代の"徳島のシンボル"でもあった。
 
 ただし今回の取材で、大﨑は笑わなかった。
 
 インタビューの誌面を見られた方は、「え、飛び切りの笑顔じゃないか!」と思うはず。これは「JINS PC 徳島ヴォルティスモデル」の話をしていた時に浮かべた「ジュンヤスマイル」を、カメラマンが逃さず押さえたものだ。
 
 しかし、続いてチームの話に入っていくと、彼の顔はみるみる厳しい表情になっていった。
 
(最高の表情を見せてくれただけに、誌面上ではこのカットをメインに使わせてもらいました)。
 
 無理もない。1年でJ2に戻った今季の徳島は、1年でのJ1返り咲きと、その先のJ1定着を念頭に置いてシーズンに臨んだ。ところが、まさかの開幕からの躓きにより、8節を終えて18位と低迷している(取材時は20位だった)。
 
 加えて心機一転、背番号10をつけた大﨑のほうも、いまだノーゴール。2年前に飛躍した左WB、センターハーフ、そして練習試合ではFWとしてもプレーしているものの、ポジションは決して「不動」とはいかず、2試合でスタメンから外れている。
 
 チームも、大﨑個人も、なかなか歯車が噛み合わず、もがき苦しんでいるのだ。
 
 だから、インタビューの冒頭に笑ったあと、最後に「いやあ、今はそんなに笑えませんよ……」と苦笑いを浮かべるまで、一貫して、表情は厳しいものだった。
 
「みんな窮屈にプレーしてしまっている。だから、楽しくできていない。では、どうすれば楽しくできるか。そのためには勝つこと。勝つしかない。それが一番の薬になる」
 
 大﨑はそのように巻き返しを誓った。
 
 そのあとに練習場のピッチに出てユニホームを着用した写真を撮影した際、彼はリクエストに応じ、真剣な表情、そして柔和な表情を作ってくれた。
 
「でも、やっぱり淳矢は笑顔がいいね!」
 
 カメラマンのひと言で、何秒間か「ジュンヤスマイル」が戻った。
 
 その笑みが伝播するように、記者も周りにいた人も「もらい笑い」を浮かべる。大﨑の本質の魅力は、やはりなにも変わっていない。
 
 それはピッチ上にも通じることだ。
 
 縦から横へ鋭角に切り替えて、中央へボールを持ち込む。トップスピードに乗ったまま細かいタッチで敵陣をえぐる。その溌剌と光を放つプレーは、観ている者をスカッと爽快にさせ、心の深いところにポッと暖かな熱を充填させてしまう特別な力を持っている、まるで春の陽光のように。
 
 きっと、これから大﨑の季節が訪れる。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)
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 サッカーダイジェスト(NO.1328│5/14号)が、4月23日に発売されました。巻頭特集「J1全クラブの序盤戦査定」に続く、「J2インタビュー」にて、今季から徳島の背番号10をつける大﨑淳矢選手が登場しています。ぜひご覧ください。
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