【CLポイント解説】疑問が残ったシメオネとズバリ的中のアンチェロッティ――名将の采配がマドリードダービーの勝敗を決する

2015年04月23日 遠藤孝輔

欧州連覇に向けて最大の収穫はここにきての守備の安定だろう。

1)エルナンデスが大仕事
 
 マドリーを5シーズン連続となる準決勝に導いたのは、立ち上がりから気迫あふれるプレーを連発していたエルナンデスだった。
 
 GKとの1対1を迎えた80分の決定機は、オブラクの好セーブに遭ったものの、88分に殊勲の決勝点を叩き出す。途中出場でピッチに立ったばかりの相手CBヒメネスのマークを外し、エリア内に侵入したC・ロナウドからの横パスを冷静にゴールに流し込んだのだ。
 
 第1レグから猛攻を仕掛け、この日も前半だけで11本のシュートを放っていたマドリーにとっては、まさに臥薪嘗胆の努力が報われる一発となったが、この言葉はエルナンデスにも当てはまる。出番が限られても腐らずに牙を研ぎ、この大一番で最高の結果を残したのだから。
 
 勝利目前のアディショナルタイム、ヒーローとなったCFの目は涙で溢れていた。
 
2)疑問符が付いたシメオネの交代策
 
 今シーズン8度目の対戦にして、初めてマドリーに敗れたアトレティコの誤算は、アルダの退場(76分)を置いてほかにないだろう。
 
 しかし、敗因は他にも存在する。なかでも裏目に出た印象が否めなかったのは、シメオネ監督の采配だ。
 
 ボールポゼッションの質が高く、前線の圧倒的な"火力"を誇る王者を向こうに回し、堅守速攻を貫いたゲームプラン自体は誤りではない。疑問符が付いたのは、チーム最大の得点源であるグリエーズマンを早々と見切った交代策だ。
 
 セットプレー時の守備をはじめ、身体を張りつづける奮闘を見せていたとはいえ、カウンター戦術に適したタイプとは言い難いマンジュキッチにこだわった理由は何だったのか。ヴァランヌとペペのマークに苦しんだこのCFは結局、最後まで1本のシュートも放てなかった。
 
3)MF起用に応えたS・ラモス
 
 一方で、マドリーのアンチェロッティ監督による采配はピタリ! イジャラメンディやケディラという選択肢がありながら、あえてインサイドハーフに抜擢したS・ラモスが、及第点を上回るパフォーマンスを披露したのだ。
 
 不用意なボールロストとパスミスはわずか1回ずつで、パス総数は司令塔のクロースを4本上回る65本。もちろん、対人戦での強さも発揮し、マドリーの中盤を引き締めていた。
 
 ベンゼマ、ベイル、モドリッチ、マルセロが戦線離脱中という苦しい事情を抱えながら、しっかりとチームをマネジメントして、天敵からここ一番での勝利を収めたアンチェロッティの名声はさらに高まった印象だ。
 
 リードしているチームの定石とはいえ、90分以降に3つの交代枠を1つずつ使って時間を稼ぐなど、その采配は最後まで抜け目なかった。
 
4)CL連覇に向けた好材料は…
 
 180分間を無失点で切り抜けた守備陣は、エアバトルや対人戦でほぼ負けなしだったヴァランヌとペペの両CBが大きな存在感を発揮したが、GKカシージャスもまた、ほぼノーミスの活躍を披露した。
 
 身を挺したスライディングなど、泥臭い仕事を厭わなかったイスコを筆頭に、アタッカー陣がディフェンスに精を出していた点も、アトレティコに付け入る隙をほとんど与えなかった要因だ。
 
 この一戦を含め、マドリーは4月以降の公式戦6試合で、4試合の完封勝利を収めている。ここにきて守備が安定しているのは、前人未到のCL2連覇に向けた好材料だろう。
 
文:遠藤孝輔

【写真で回想】レアル・マドリー栄光のCL史
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