【千葉】デビュー戦でゴールの高卒ルーキー・ブワ二カ啓太。示した可能性と家族との微笑ましい1シーン

2021年03月01日 本田健介(サッカーダイジェスト)

見事なヘッドでネットを揺らす

デビュー戦でゴールを決めたブワニカ。試合後には記念撮影も。(C)J.LEAGUE PHOTOS

[J2第1節]千葉1-1甲府/2月28日/フクアリ

 ホームで甲府とのリーグ開幕戦を迎えた千葉は、0-1と1点のビハインドで後半へ向かった。開幕戦特有の緊張からか全体的に動きが固い。その様子を見たユン・ジョンファン監督がカンフル剤として後半頭から抜擢したのが、高卒ルーキーのFWブワニカ啓太だった。

 2トップが縦関係になることの多い今季の布陣(4-4-2)で1.5列目に入ったブワニカは「緊張はしましたが、1年目で初出場なので怖いものはないと思ってピッチに入りました。今日のために準備してきたので、思い切ってやるだけでした」と臆することなく、DF間にポジションを取ってボールを引き出す。そして相手エリアが近づけば果敢に突破を図った。

 待望の瞬間も彼の仕掛けから生まれた。右サイドでボールを受けると反転しながらドリブル。クロスはわずかにゴール中央の味方に合わなかったが、逆サイドで左SBの安田理大がボールを拾うと、すかさずポジションを取り直す。

 安田がクロスを入れた瞬間、ファーサイドで待っていた18歳はDFとの競り合いに勝ってヘッド。放物線を描いたボールは相手GKがセーブを見送るなか、逆サイドのネットへ吸い込まれた。デビュー戦での見事なゴール。スタジアムのボルテージを一気に上昇させた。
 運動量や跳躍力などに定評があり、FWやトップ下などをこなすタレントは、185㌢・73㌔のすらっとした体躯を活かしながら、足もとの技術も披露し、さらに前線からの献身的なプレッシングも見せ、サポーターの心を鷲掴みにした。

 ユン・ジョンファン監督は「1試合をもって評価するのは難しい」と周囲の喧騒に釘をさしながら、優し気な表情でルーキーの姿勢を評価する。

「試合に出るための、努力をしていますし、なにかを吸収しようという姿勢がキャンプから出ていました。だからこそ、こういう結果を得られた。今後、化けるかは彼に懸かっています」

 プロ入り前は全国的に名の知れた選手ではなかった。しかしポテンシャルは非常に高い。それこそ伸びしろは十分だ。

 ちなみにゴールパフォーマンスは、子どもが生まれたばかりのチームの通訳であるファブリシオ氏に捧げるゆりかごダンス。

「通訳のファブさんと『ブワ、点を取ったらゆりかごやってね』と約束していたのでやりました。できて良かったです」

 あどけない笑顔を見せる。また急遽巡って来たデビュー戦には、家族の姿もあった。

「本当は来れなかった予定なんです。でも、追加で販売されたチケットが取れたみたいで。試合前に『行くよ』とメッセージがきていました。最初、探していたんですが、見つからなくて。でもゴール直後に目に入ってきました。家族の前でゴールを取れて本当に最高です」

 試合後、スタンドの家族と喜びをともにする微笑ましいシーンも印象深い。

「おめでとうと言ってもらいました。サッカーとは関係ないのですが、妹からは受験で100点取ったよと、報告も受けて(笑)」

 家族思いの好青年は、今後の成長も大いに期待される。千葉の新たな星としてさらなる輝きを見せてくれるかもしれない。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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