スアレスは「なぜ点が取れるのか」 その秘訣をフィジカル面から解き明かす

2015年04月21日 澤山大輔

上半身と下半身が別々に動いている。

「点取り屋」スアレスをフィジカル的側面から解剖する。 (C) Getty Images

 例の噛みつき事件の出場停止で出遅れながら、加入1年目のバルセロナでも決定力の高さを見せつけているルイス・スアレスは、世界最高のストライカーのひとりだ。
 
 イングランドでもスペインでもゴールを連発するスアレスは、なぜ点が取れるのか――。専門家(アスリートのフィジカル・コンサルティングを専門とする『フィジカリズム』のランニングコーチ・横原和真氏)の分析で、フィジカル的側面からその秘訣を解き明かす。
 
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 バルセロナの攻撃の中核を担っているスアレスは、常識ではちょっと計れないフィジカルをしている選手ですね。
 
 スアレスは、身体の重心を2つに分けて動かしている選手です。なかなか真似をしにくい動きといえるでしょう。表現するならば、"上半身と下半身が別々に動いている"でしょうか。
 
 上半身が左方向に流れていても、下半身はそちらに引っ張られずに居残ってシュートを打ったり、パスを出したりすることができる。表現が正しいかどうか分かりませんが、上半身と下半身が分離しても動かせる、そういう身体の動きができる選手です。
 
 腰から上と、腰から下が別々に動く――つまり身体の中心に軸があるのに、四肢をうまく使って下半身が上半身に引っ張られないように使える。だからこそ、並のフィジカルならただ倒れ込んでしまってシュートまで持ち込めないような場面でも、ゴールの隅に飛ぶよう精密にコントロールされたシュートを放つことができる。このバランスは本当に凄いと思います。
 
 サッカーに詳しい方には説明するまでもないでしょうが、スアレスは常に相手の裏、相手の重心の逆を取るように動いていますよね。すべてのプレーがゴールに直結するよう逆算されていて、彼のフィジカルはまさにそうしたプレーを繰り返す中で自然と身についたものではないでしょうか。
 
 シュートシーンを見ていても、例えば先日分析した武藤嘉紀選手は自分の向かいたい方向にまっすぐ身体が向いているのに対し、スアレスは上体が流れていたり後傾していたり。インパクトの強さだけを求めるのではなく、GKやDFのタイミングを外すことを意識してきた結果、こういう身体の動かし方を会得したのではないでしょうか。
 
 スアレスももちろん強いシュートを打てますが、どちらかといえば相手の予測や間を外すようなプレーが多い印象です。
 
 走り方を見ていると、体勢はわりと低めですね。身体を捻じる動作も見受けられ、身体をくの字に倒し込んだり、脚の軌道も外旋したりしています。陸上の観点から言うと、走り方自体は上手いとは言い難いところがあります。
 
 しかしストライドがすごく広く、その広さにもかかわらずボールは常に足下に吸い付いている。このあたりは、身体の使い方ではなく、優れたサッカーセンスによるものだと言えるのではないでしょうか。

次ページどんな体勢でもシュートが決まりさえすればいい。

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