【川崎】開幕戦で改めて見えた強さの根源。象徴的だった美しい2ゴールと試合後の表情

2021年02月27日 本田健介(サッカーダイジェスト)

横浜とのリーグ開幕戦には2-0で勝利

チームメイトに檄を飛ばすキャプテンの谷口。開幕戦では横浜に2-0で勝利した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第1節]川崎2-0横浜/2月26日/等々力
 
 思わずため息の漏れるような2ゴールだった。

 王者・川崎がリーグ開幕戦で奪った美しい2得点である。

 先制点は21分。練習で繰り返し行なっている"相手エリア内のニアゾーンを攻略する形"。右サイドで幾人かがボールに絡み、インサイドハーフの脇坂泰斗がエリアのやや外から浮き球の縦パス。これに走り込んだ右SB山根視来がゴールラインギリギリでヒールで折り返すと、そこに待っていた家長昭博がダイレクトで豪快に決めた。

 さらに43分の追加点。今度はCKの流れから右サイドを崩しにかかると、田中碧がレアンドロ・ダミアンらとのパス交換から縦に突破し、鋭いクロス。ニアに走り込んだ家長がヘッドを突き刺した。こちらも練習で合わせてきたクロスからの形であった。

 ともに横浜守備陣が天を仰ぐしかなかったゴールである。高レベルで、川崎の魅力を改めて象徴する崩しであった。

 もっとも印象的だったのが、試合終了のホイッスルを聞いた後の川崎の選手たちの表情だ。どこか強張った色が見えたのは、前半は横浜を攻守で圧倒しながら、後半は受けに回る時間が増えたからだろう。満足し切れない――、そんな雰囲気こそが、今の川崎の強さの所以なのだろう。
 確かに試合後に話を訊けば、キャプテンの谷口彰悟は「開幕戦というところで、勝ちたい気持ちが強い分、多少は守りに入ったり、なにがなんでも勝ち切るところで、受けに回った部分はある」と振り返る。

 そして「後半の戦い方でいうと、相手がパワーをかけてきた時に、どこで自分たちの時間を作るのか。もう少し合わせていくことができれば、守りながらじわじわとカウンターを狙う。それを意図的に作れればいいと思います。どんどん自分たちもパワーを使って相手の時間を作らせない。みんなで意思を合わせると、できなくもなかったのかなと。そこはコミュニケーションをとりながら、次の試合ではもっと良くなるようにしたいです」と続ける。

 3-2でG大阪を下した先の富士ゼロックス・スーパーカップは、同様に2-0で前半を折り返し、後半に追い付かれた後に、終了間際に勝ち越した。2失点したG大阪戦の後半に比べれば、守備面は改善できたと捉えられるのだろう。

 それでも前人未到のリーグとACLの"ダブル制覇"を掲げるチームが目指すべきところは、さらに高みにある。

 振り返れば、今オフにポルトガルへと移籍した守田英正は昨季、冗談まじりにこんなことを語っていた。

「このチームはどれだけ気持ちよく勝とうが、試合が終わったらすぐに『ここはああできた、あそこはこうだった』みたいに話し合いが始まるんですよ。本当に"サッカーマニア"が多くて。優勝した試合後も『あのシーンは……』とか修正点を確認し合っていたんです。そんな選手ばっかりなんですよね」

 そして谷口も今季の開幕にこう話していた。

「先輩の方々、そして後輩も自分のやるべきことをしっかりやる。意識の高い集団になれています。そこがこのチームのなにより良いことろ。だから僕があえて何かを言わずとも、率先して行動できる選手ばかりなんです」

 攻守のクオリティはリーグ随一である。ただそのパフォーマンスを支えるのは、個人、そしてチームの飽くなき向上心だ。「志」「まずは自分たちがやるべきことをやる」という言葉を口にする鬼木達監督が求めるのもそういう部分である。開幕戦で見せた見事な2ゴールと、浮かれない様子からは、今季の川崎のさらなる進化の予感が漂っていた。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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