「ランプシェード」の汚名を返上 フェライニの確かな光【マンU番記者】

2015年04月20日 マーク・オグデン

ピッチに直立する194センチはスタンドライトの趣。

33節チェルシー戦に敗れて連勝は止まったが、持ち前の強さと高さを発揮してユナイテッドの巻き返しに大きく貢献しているフェライニ。 (C) Getty Images

「ランプシェード」
 
 少し前まで、マンチェスター・ユナイテッドのサポーターはマルアン・フェライニを皮肉たっぷりにこう呼んでいた。
 
 エバートンで師弟関係にあったデイビッド・モイーズ前監督に誘われ、ベルギー代表MFがマンチェスターにやって来たのは2013年9月。移籍期限最終日のことだった。移籍金は2750万ポンド(約46億8000円)と高額で、サポーターの期待は否応なしに高まったが、フェライニは低調なパフォーマンスに終始してしまう。
 
 期待は落胆へと変わり、フェライニ獲得は期限最終日にパニックに駆られた無駄遣い、補強の失敗の典型例などのレッテルが貼られた。
 
 ルイス・ファン・ハール監督が就任してもフェライニを取り巻く状況は変わらず、プレシーズンマッチのバレンシア戦では、彼に対するブーイングがオールド・トラフォードに鳴り響いた。
 
 ランプシェードと揶揄される理由は、トレードマークであるアフロヘアがちょうどそう見えるからだけではない。図体ばかりが大きくて、まったくと言っていいほど動かない。ピッチに直立する194センチは、さらながらスタンドライトといった趣だからでもある。
 
 しかし今シーズン、フェライニの評価はゆっくりと上昇していった。秋口からはレギュラーに定着。肋骨の怪我で昨年末からいったん戦列を離れたが、コンディションが万全に整った3月からスタメンに復帰し、ユナイテッドの反攻の原動力になっている。
 
 オランダ人指揮官も、「わたしは創造性豊かな選手をいつも重用しているが、イングランドではそれだけでは勝てない。チームには接触プレーに強い選手が必要で、フェライニは間違いなくその類の選手」と称賛する。
 
 シーズン序盤は「構想外で売却されるのでは」と番記者の間でも意見が一致していたが、4月12日のマンチェスターダービーの前にファン・ハールが「キーマン」に位置づけるなど、いまやその評価は180度変わった。チームメイトのアシュリー・ヤングも、称賛の言葉を惜しまない。
 
「今日(マンチェスターダービー)のフェリー(フェライニの愛称)は凄まじかった。フェリーがペナルティエリア内でボールを受ければ、ゴールの可能性は高まる。好調時の彼を捕まえるのは至難の業。完封できるマーカーなんて、まずいないよ」
 
 加入1年目の昨シーズンは、手首と腰の怪我にも苦しみ最後まで本領を発揮できなかった。しかし、ロングボールによる直線的な攻撃とパスサッカーを巧みに使い分けるファン・ハールのサッカーで、その「強さ」と「高さ」が活かされた。怪我から開放されると運動量も向上し、オランダ人指揮官に「いまのパフォーマンスができていれば、先発メンバーから外せない」と言わしめた。
 
 失意に沈んだモイーズ政権の象徴的存在とまで言われたフェライニだが、「ランプシェード」の汚名を返上し、ようやくユナイテッドに確かな光を灯しはじめた。
 
【記者】
Mark OGDEN|Daily Telegraph
マーク・オグデン/デイリー・テレグラフ
英高級紙で最大の発行部数を誇る『デイリー・テレグラフ』のユナイテッド番を務める花形で、アレックス・ファーガソン前監督の勇退をスクープした敏腕だ。他国のサッカー事情に通暁し、緻密かつ冷静な分析に基づいた記事で抜群の信頼を得ている。
【翻訳】
田嶋康輔
 
 
 
 
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