【川崎】ゼロックス杯で見えた王者の現在地。新シーズンもJを席巻する可能性はあるか

2021年02月21日 本田健介(サッカーダイジェスト)

G大阪を下し、2度目のゼロックス制覇

G大阪を3-2で下した川崎。ゼロックススーパーカップを制した。写真:金子拓弥

[ゼロックス杯]川崎3-2G大阪/2月20日(土)/埼玉スタジアム2002
 
 2月20日に行なわれたシーズン開幕を告げる試合、富士ゼロックス・スーパーカップ。2020年シーズンは圧倒的な成績でリーグを制した"王者"川崎が、G大阪を3-2で下し、早くも"1冠"目を手にした。
 
 前人未踏のリーグとACLのダブル制覇を新シーズンの目標に掲げる川崎にとって、オフには小さくない変化が起こっていた。レジェンド中村憲剛が現役を退き、不動のアンカーだった守田英正がポルトガルへ移籍。ピッチ内外で小さくない影響があると見られたのだ。
 
 もっともG大阪戦との一発勝負で示したのはどこか風格のようなものが漂う、落ち着いた姿勢であった。確かに前半を2-0で折り返しながら「3点目が取れなかったのが要因」と指揮官、選手が口を揃えたように、後半はG大阪に反撃のチャンスを与えてしまい、一時、2-2に追い付かれている。勢いでいえば、逆転を許してもおかしくはないシーンもあった。
 
 それでも最後の一線を越えさせずに堪えると、途中出場の小林悠が後半ラストプレーで値千金の決勝弾。ピッチ中央で田中碧、遠野大弥、小林悠が鋭い縦パスをつなぎ、エリア内に持ち込んだ小林が対角線上に見事なシュート。勝負所を逃さないふてぶてしい姿、そしてベンチの層の厚さを改めて示すゴールであった。
 
 
 川崎は2019年に初めてゼロックスを制しているが(浦和に1-0で勝利)、この時はどこか勢いで勝ち切った印象もある。現に前年の2018年にC大阪に2-3で敗れた悔しさを胸に、コンディションを整えてきたところがあった。
 
 一方、今季はG大阪も同様だが、過酷な連戦の後に元日の天皇杯決勝を戦い、急ぎ足でオフを消化。新型コロナウイルスの影響で、キャンプの過ごし方も例年とは変わり、練習試合の数も限られた。
 
 それだけに今のチームの仕上がりは60~70㌫ほどが妥当だろう。現にG大阪戦では、らしくない自陣でのパスミスが数回見られ、前述したように後半はペースダウンしている。
 
 それでもチャンスを見逃さない嗅覚は、強者のそれで、特に前半はG大阪を翻弄するパスワークで"らしさ"を存分に発揮。ゲームをコントロールしていたと言えるだろう。さらに鬼木達監督は新戦力のジョアン・シミッチを先発で、塚川孝輝、大卒ルーキの橘田健人を後半途中で"川崎デビュー"させている。ACLも戦うだけに総力戦となる今季へ向けて、準備も進めていると言えるだろう。
 
 川崎が昨季のような強さを発揮するのか、新シーズンの注目ポイントだが、ゼロックスを観る限り、まだまだ余力があり、期待値は高まる。昨季の同時期は新システムの4-3-3の順応に右往左往していたことを考えれば、ベースがある分、大きな進歩とも捉えられる。
 
 ACLを含めて過酷なスケジュール、そして"川崎包囲網"が大きな障壁になるだろうが、今年もそのパフォーマンスは観衆を魅力するはず。日本を元気にしたいとの目標を持つ、チームの挑戦は改めて楽しみだ。
 
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
 
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